2014 Fiscal Year Annual Research Report
CXCL17反応性の好中球型免疫抑制細胞の形態学的解析と新たな抗腫瘍戦略への応用
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14J12011
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
松居 彩 東京女子医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ケモカイン / 癌 / 血管新生 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケモカインは免疫細胞を動員して抗腫瘍効果を生み出す一方で、腫瘍の転移に関与することが知られているなど、癌治療の観点からも重要な標的因子である。これまでに申請者は、CXCL17を発現する腫瘍における増殖促進と、CXCL17走化性細胞群が直接的に腫瘍増殖を促進させる可能性のあることを明らかにしている。そこで、本研究ではCXCL17反応性細胞による腫瘍増殖の機序解明を目的に研究を進めた。 ヒトまたはマウス由来の複数の腫瘍細胞株にCXCL17を強制発現させた場合、非発現コントロール株に比べてマウス固体内での腫瘍増殖が促進され、腫瘍血管数の増加が認められた。形成された腫瘍内の血管を三次元的に解析した結果、コントロール腫瘍と比べ均一な血管網の構築、ペリサイトの形態、血管透過性などは保たれていた。 一方で、腫瘍組織内に存在するCXCL17反応性の細胞の特徴を解析するにあたり、対照群として腫瘍環境に暴露されていない細胞の解析を行ったところ、表現マーカーと形態的特徴から好中球型の骨髄由来免疫抑制細胞(Myeloid-derivd suppressor cells:MDSCs)であることが証明された。さらに、これら細胞の分化段階、血管新生因子や接着因子などの発現についても解析を行った。もともとMDSCは未熟な細胞群に分類されるが、CXCL17に反応するMDSCにはそれ以上に未熟な状態の細胞が含まれていることが判った。 これらの結果から、CXCL17が腫瘍の血管形成における構造的・機能的変化をもたらす要因になりうること、さらにCXCL17反応性細胞群がそれに深く関わる可能性があることが示唆された。今後は、これら血管形成とCXCL17反応性細胞との関わりについてさらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍の血管形成におけるCXCL17の関与が、血管数を増加させるという量的な変化だけに留まらず、血管網の構築や血管構造などの質的な変化までもたらすことを明らかにできた。さらに、腫瘍環境に暴露されたCXCL17反応性細胞を解析するうえで比較となる、対照群(腫瘍環境に暴露されていないnaiveな状態)の細胞特性の解析も概ね完了している。これらの結果は、CXCL17発現腫瘍の増殖を著しく促進させる要因が、形成血管の構築・形態変化であることを明らかにした。さらに、その変化をもたらす可能性のある細胞の特徴の一部を明らかにし、次年度以降の研究の基盤を築いた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、CXCL17発現腫瘍の血管構造の変化が如何にして引き起こされたのかを重点的に解析する。特に、血管網の構築とペリサイトの形態が変化していたことに関して、血管形成時における細胞の動きや発現している因子の探索を、組織学的手法を中心に解析を試みる。それに加え、腫瘍組織内のCXCL17反応性細胞の特徴解析を行う。腫瘍組織に走化する前の細胞の状態と比較して、腫瘍環境に暴露されることでどのような変化が生じているかを見出した。この解析では細胞染色法を用いて、表面マーカーの有無や細胞形態の違いなどから判断する。さらに、上記2つの実験系を足掛かりに、CXCL17反応性細胞が血管形成にどう関与しているのか検討する実験系に着手したい。この解析では、血管内皮細胞をもちいたin vitroの実験系と、担癌マウスモデルを用いたin vivoの解析を予定している。
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Research Products
(4 results)