2014 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートンの光学実験における理論と証明方法の発展史
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14J12025
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多久和 理実 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 科学史 / 物理学史 / ニュートン / 光学 / 再現実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
歴史学的手法を用いた調査として、2015年1月に英国を訪問し、British LibraryおよびNational Library of Scotlandにおいてニュートンの手稿や公開実験に関する記録を収集した。また、その際にニュートンの実験精度が不十分だったこと、17-18世紀の学者たちがニュートンの実験の再現に苦労したことについての資料に基づく研究成果をBritish Society of History of Science Postgraduate Conference 2015において発表した。この発表は好評を得たため、4月にベルガモで行われる近代数学史のワークショップに招待されてより詳細な研究発表をすることとなった。 考古学的手法を用いた調査として、ニュートンが17世紀に行った光学実験を再現した。再現するにあたって、まずニュートンの実験記録やイギリス及びイタリアに残っているニュートンが使ったと言われるプリズムから当時のガラスの屈折率・分散率を見積もり、株式会社オハラの協力の下でニュートンが使ったものと同様のプリズムを作成した。また、東京工業大学大学院物性物理学専攻の金森英人准教授から現代物理の視点から実験を評価するに当たっての助言を受けた。また、実際に17-18世紀に作られたプリズムを用いた実験の再現を計画している。2015年2月にパドヴァ大学物理学史博物館を訪問した際に、Fanny Marcon研究員の協力の下、当時のプリズムを用いての簡易的な実験の再現を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果は日本科学史学会年会およびBritish Society of History of Science Postgraduate Conference 2015において発表した。この発表は好評を得たため、翌年度4月にベルガモで行われる近代数学史のワークショップに招待されてより詳細な研究発表をすることとなった。また、パドヴァ大学物理学史博物館に当時のプリズムを用いた実験の再現を依頼する際にも、十分に説得力をもつ実績となった。 2014年12月、資料調査結果の分析を行っていたところ、当初の調査対象であるニュートンが残したプリズム実験の記録と、ニュートンが残した干渉稿観察の記録には、ニュートンが現象を数量化した過程が書かれていたため、両者を比較して調査する必要があることが判明した。本研究遂行上、数量化の評価を行うことは不可欠であるため、補助資料調査と分析を行う必要が生じた。2か月間追加の調査を行ったため、研究計画が2か月分後ろにずれ込み、科研費を翌年に繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
歴史学的手法を用いた調査の主要な部分は終えてしまっているので、今後は考古学的手法を用いた調査の部分を進めることになる。 既に予備実験と簡易的な再現実験を行っているので、より厳密な実験の再現に取り組む。また、実際に実験を行う場合はプリズムの材質や頂角、スクリーンまでの距離や孔の大きさと言った多様な条件を連続的に変化させることはできないので、実験のシミュレーションを行って、そのデータの傾向と実際の実験データを照らし合わせることも計画している。
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Research Products
(5 results)