2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世後期洋風画派と写生派との横断的研究-司馬江漢と円山応挙の関連性を中心に
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14J12039
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
橋本 寛子 公益財団法人大和文華館, 学芸部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 司馬江漢 / 円山応挙 / 浮絵 / 眼鏡絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究課題である司馬江漢(1747-1818)と円山応挙(1733-95)を中心に、受入機関である大和文華館に所蔵されている洋風画作品について調査を行った。特に、応挙作品の中で遠近法を用いた洋風表現が見られる《東山三絶図》や、司馬江漢に影響を与えた秋田蘭画家・小田野直武(1750-80)の眼鏡絵《江之島図》なども調査した。 そして、京都で活動した円山応挙の眼鏡絵様式を、江戸へ伝播したと評価される浮世絵師の歌川豊春(1735-1814)の浮絵に注目し、豊春を通して江漢と応挙の比較を行うため、神戸市立博物館所蔵の豊春の浮絵を約70点、豊春と同時代に活動した不韻斎(生没年不詳)の浮絵約20点を調査した。 また、同時に同館所蔵の応挙の作又は伝応挙とされる肉筆反射式眼鏡絵巻子《京洛・中国風景図巻》と木版反射式眼鏡絵約20点、司馬江漢の銅版反射式眼鏡絵8点の調査も行い、それぞれの様式を比較するためデータベースを作成した。 それらを踏まえ、大和文華館特別展「蘇州の見る夢―明・清時代の都市と絵画―」展(開催期間2015年10月10日〈土〉~11月15日〈日〉)の開催記念国際シンポジウム「蘇州をめぐる諸問題―中国と日本の観点から― 」(2015年10月31日〈土〉~11月1日〈日〉)の2日目の「Session5日本の絵師たちが見た蘇州」にて、「日本近世絵画にみる中国経由の洋風表現について―浮絵と眼鏡絵を中心に」のタイトルにて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に応挙の眼鏡絵と洋風表現を用いた風景図について注目し調査を行った。また、京都で活動した円山応挙の眼鏡絵様式を江戸へ伝播した歌川豊春の浮絵も同時平行して調査を行い、それらのデータベースを作成した。 これらをもとに国際シンポジウムにて発表し、同内容を報告書(「日本近世絵画にみる中国経由の洋風表現について―浮絵と眼鏡絵を中心に」『特別展「蘇州の見る夢―明・清時代の都市と絵画―」開催記念国際シンポジウム報告書 蘇州をめぐる諸問題―中国と日本の観点から―』2016年)に執筆し、一定の成果を挙げることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、研究対象とする大和文華館所蔵の司馬江漢筆《海浜漁夫図》(寛政 11 年 1799)と、同館所蔵『東山第一楼勝会図画帖』(同年)の調査を行う。特に、『東山第一楼勝会図画帖』については、田中敏雄氏の「東山第一楼勝会書画帖について」(『大和文華』第85号、1991 年)による詳細な報告をもとに、そこに画を寄せた京都の画家たち、特に応挙没後の江漢と同時代に活動した円山派について、一人ずつ事跡を辿りながら作品と資料のデータベースを作成する。そして、その過程で明らかになる画家については、基準作など作品比較のために必要に応じて国内外の所蔵先で調査を行う。 また、同時に天明8年(1788)から寛政元年(1789)にかけての江漢の長崎旅行記『江漢西遊日記』『西遊旅譚』、また晩年の近畿旅行記『吉野紀行』の記述に基づき、江漢が西日本で作成した作品や、社寺に納めた絵馬の調査を行い、江漢の近畿方面での制作活動と円山派との関連について考察を行う。 具体的には、今年度は江漢によって厳島神社に奉納された絵馬《木更津浦之図》を調査する。これは、江漢が社寺に奉納した大型絵馬の中で唯一当初の場所に現存する作例である。本図を調査することにより、江漢の西日本での制作活動の一端とその受容について明らかにしたい。 研究対象とする作品の調査方法は、一眼デジタルカメラで全体と細部撮影を行い、それらの画像データをノートPCで整理する。そして、論文執筆のために活用できるように応挙作品と江漢作品の調査データをデータベース化することを目標とする。
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Research Products
(3 results)