2015 Fiscal Year Annual Research Report
イヌiPS細胞を用いた血小板減少症の治療に向けた応用的基盤技術の開発
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14J12063
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西村 俊哉 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | iPS細胞 / イヌ / 胚体外内胚葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に作製した薬剤誘導性ベクターによるイヌiPS細胞を用い血小板への分化誘導を行うに当たり、その性状を解析した結果、本細胞は無血清・無フィーダー細胞培地で長期継代培養可能なことに加え、既報のイヌiPS細胞で必須とされる白血病阻害因子(LIF) を培養に必要とせず、Erk1/2シグナルを介して未分化状態を維持している新規のイヌiPS細胞であることを見出した。さらに、このイヌiPS細胞を脊髄損傷の臨床研究で用いられている間葉系幹細胞(MSC)へ分化誘導することにも成功した。しかし、血小板に分化誘導することができなかったために、さらに高い多分化能を有したイヌiPS細胞の作製を目的とし、マウスやヒトで高品質なiPS細胞の作製が報告されている低分子阻害剤を用いてイヌiPS細胞の作製を試みたところ、長期継代可能で胚体外内胚葉(XEN)マーカーを発現するXEN様細胞の作製に成功した。また、この細胞はALP染色に一部陽性を示し、血球系細胞および肝細胞様細胞への分化誘導が可能であった。イヌXEN細胞の報告はこれまでに見当たらず、またその分化能についても調べられていない。今回得たXEN様細胞は多分化能を有し、血球系への分化誘導も可能であったことから、今後、この細胞の血小板への分化誘導および更なる解析を試みる。 以上のことから、今年度は、既報とは異なる新規のイヌiPS細胞を見出し、多分化能を持つXEN様細胞の作製に成功し、様々な分野で応用可能である新たな知見を生み出した。今後、得られた細胞を詳細に解析し、研究発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、得られたイヌiPS細胞の血小板への効率的な分化誘導に当たり、その性状を調べた結果、本細胞は無血清・無フィーダー細胞培地で長期継代培養可能なことに加え、新規のイヌiPS細胞であることを見出した。また、本細胞を血小板へ分化誘導することはできなかったが、低分子阻害剤を用いることで、イヌで初めて、多分化能を持つ胚体外内胚葉細胞(XEN細胞)様細胞の作製に成功したことから、今後この細胞を血小板へ分化誘導することによって、研究計画船体がが飛躍的に進む可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の次年度以降の推進対策として、引き続き高い多分化能を持つイヌiPS細胞の作製を行うとともに、得られたイヌXEN様細胞を用いて、血小板への分化誘導を行う。また、血小板への分化過程におけるC-MYC遺伝子の発現量を測定することで、C-MYC遺伝子の分化効率に及ぼす影響を解明する。次に、導入遺伝子の発現強度を操作できる薬物誘導性C-MYCベクターをイヌXENおよびiPS細胞に導入し、導入C-MYC遺伝子の発現量を上昇させることで、効率的な血小板への分化誘導を行う。この方法で効率的に血小板を得られない場合は、血小板の凝集機能を活性化するメタロプロテアーゼ阻害剤を培地に添加し、機能的な血小板の作製効率の改善を行う予定である。得られた血小板を正常犬および疾患モデル犬に投与し、その治療効果と副作用を評価する
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Research Products
(3 results)