2014 Fiscal Year Annual Research Report
小学校授業における教師の秩序維持と児童の受容に関するポライトネス理論からの検討
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14J12186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川島 哲 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 教師の指示発話 / 教室談話 / 小学校授業観察 / 授業参加 / ポライトネス理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校授業における教師による教室秩序を維持するための発話についての研究を行った。第一に教師がどのように授業を進行させるための指示を行っているのか、第二に児童はどのように受け止め、対応しているのか、第三に教師毎に指示表現の変化に違いはあるのか、以上の3点を明らかにすることを目的としている。分析は、教室談話をエスノメソドロジーの手法で検討し、ポライトネス理論を考察の視点として用いた。 本年度観察した1年生の教室における継続的な授業観察から明らかになったことは、状況により教師の指示表現が異なること、指示表現の変化の仕方の二点である。 教師が児童に促す行為によって、指示表現が異なっている。その異なり方には一定のパターンが観察された。すなわち、教師は言葉かけによって、児童に対する自らの立ち位置を調整し、児童に活動への参加がしやすいようにしていた。また、同じ行為を促す場合でも、直前に行っていた児童の活動の様子によって、教師の指示表現が異なっていた。 指示表現は、児童の気持ちに理解を示したり勧誘の文末を用いたりする親密性への配慮、児童にやってくれるよう頼んだり児童に判断する余地を残す有能性あるいは自律性への配慮が観察された。また、簡単な活動を促す場合や児童が教師の指示に従っていない状態から移行する場合、教師は厳しい表現を用いたが、命令形を用いることは稀で、何が求められているのかを明確に示すことが確認された。 以上から、授業中に行われる教師の指示表現は、児童が授業に参加できるよう、また参加したくなるように配慮しながら、使い分けられていることが示唆された。 また、教師間の教室談話の比較から、有能性と自律性を軸に指示や注意を行う3年生の教師と関係性を軸に指示や注意を行う1年生の教師が確認された。児童を授業に参加させるという目的は同じでも、配慮の仕方には教師により個人差があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教師の発話表現の変化、児童の受容と対応、教師間の比較を目的に研究を進めている。 現在までに、教師の指示表現の変化についての検討は、児童に対し教師が促す行為による違いと、指示をする際の状況による違いの二点について教室談話の検討を行っている。採択には至らなかったものの、論文投稿を行っており、また学会での発表をしたため、研究の骨子について検討は終わっている段階にある。今後、より詳細な考察を行った後に論文化する予定である。第一の目的については、おおむね達成されている。 児童の受容と対応については、教師の指示とともに授業観察の中で児童自ら表明している様子を確認している。また、観察を行った教室において、質問紙調査の実施・回収を終えている。第二の目的についての達成度は、データの収集は完了しているが、両者を併用した検討と考察が次の課題として残っているという段階にある。 教師間の比較については、2015年度の学会で発表を行えるような知見を得ている。信頼性を高めるために、より多くの教室談話を対象に検討を進めること、妥当性を高めるために得られた知見について再度検討を行うことや他の研究者の意見を聞くことが残された課題となっている。第三の目的についての達成度は、データの収集・検討・考察の全てが形になっているものの、再度の検討が行われていないという段階にある。 よって、現在まで研究は、おおむね順調に進展していると見積もっている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の目的である教師の指示発話表現の変化・使い分けについて、教室談話分析を行った論文を2本書くことが研究推進方策となる。エスノメソドロジーの手法を用いるとともに、分析の概念装置としてポライトネス理論を用いる。 それと並行して、第二の目的である児童が指示に対してどのように受容・対応・反応しているのかについて明らかにするため、教室談話の分析を行う。これは、すでに文字起こししたトランスクリプトを再分析することになるが、映像からしか観察できない児童の動きなどについて、再度観察を行うことになる。加えて、すでに実施・収集済みである児童に対する質問紙の分析を行う。 第三の目的である教師間の秩序維持に関する発話の用い方の比較について、学会発表を行うと共に、論文化を目指す方針である。 さらに、上記の方策を持って研究推進中に新たに得た視点について、適宜検討を行いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)