2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J12222
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
阿部 優介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 染色体パッセンジャー複合体 / CPC / Aurora B / HP1 / がん細胞 / 染色体不安定性 / M期 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体パッセンジャー複合体(CPC)は分裂期において染色体を均等に分配するために機能している。CPCにはアクセサリーサブユニットとしてHP1が結合していることが知られていたが、その役割は不明であった。そこで、HP1がCPCに結合することの生理的意義の解明を目的として、本年度は以下の点が判明した。 (1) CPCにおけるHP1の結合量を解析した結果、染色体分配エラーが発生しにくい「正常細胞」に比べ、高頻度に染色体分配エラーが発生する「がん細胞」では、HP1の結合量が低下していることを見出した。 (2) 正常細胞においてCPCに対するHP1結合を阻害すると、染色体分配エラーが高い頻度で発生した。一方、HP1結合量がすでに低下しているがん細胞では、HP1結合を阻害しても染色体分配エラーの発生頻度にはほとんど影響を及ぼさないことがわかった。 (3) HP1の結合がCPCの触媒サブユニットであるAurora Bのキナーゼ活性を上昇させることを見出した。 こうした知見から、HP1はAurora B/CPCの機能を亢進させることで染色体の均等分配に寄与していると考えられる。また、がん細胞は細胞分裂の度に染色体数が変動する「染色体不安定性」と呼ばれる細胞病態に陥っており、HP1結合量低下によるAurora B/CPCの機能低下が、染色体不安定性の要因となっている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
正常細胞とがん細胞の間でHP1結合量が異なるというCPCの差異を明らかにできた。この知見に基づいた研究を進めていくうえで、解析に必要な細胞株やリコンビナントタンパク質などをスムーズに準備できたため、計画した実験を効率よく進めることができ、当初の計画以上の進展が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
HP1結合量とHP1発現レベルに相関関係はないことが判明している。したがって、がん細胞におけるHP1結合量の低下には、結合調節因子や分子修飾などによるHP1-CPC結合制御メカニズムに破綻が生じた分子背景があると考えられる。この点の解析に注力し、がん細胞でHP1結合量が低下している原因の解明を目指す。また、HP1によるAurora B活性制御メカニズムの詳細について解析する。これまでの解析により、HP1は既知のAurora Bキナーゼ活性制御(リン酸化修飾など)とは異なる方法でAurora Bのキナーゼ活性を制御していることが示唆されている。HP1が結合するCPCの領域は、相互作用によって立体構造が大きく変化する「天然変性領域」を含んでいる。そこで、HP1結合がCPCの構造を変化させることでAurora Bのキナーゼ活性が促進される可能性を検討する。HP1が結合する領域の部分断片を用いてHP1結合による構造変化について解析を進める。
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Research Products
(2 results)