2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J12296
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 創一 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 糖 / 無保護 / 合成 / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はホウ酸系試薬に求核触媒構造を組み合わせることで、特定のモチーフを認識し、それに応じて求核触媒活性がOFFからONへと切り替わることにより特定の官能基を修飾する触媒を開発し、保護基を用いずに1ステップで天然物の誘導体化を可能にすることである。具体的にはホウ酸系試薬による1,2-ジオール認識機能と、ホウ素が求核触媒構造と可逆的に形成する分子内ボレートによるスイッチ機能を組み合わせ、マクロライド系抗生物質クラリスロマイシンの6位水酸基の修飾を目指す。 この方法により、基質の立体構造に由来する選択性の増幅という既存の方法を用いて修飾できる部位とは異なる部位の官能基を修飾した天然物の誘導体を得ることが可能となる。天然物の誘導体を短工程で多様に用意するできることは医薬品の開発に繋がるため重要である。 ホウ酸系試薬と1,2-ジオールとの結合形成の可逆性を検証するべく、ポリオール構造を有する天然物であるD-アラビノースの1,2-ジオールをホウ酸で認識することによって可能となるアミノアルキニル化反応の検討を行った。この反応は、安価な糖であるD-アラビノースを原料に用い、水酸基を保護せずに炭素-炭素結合を構築することで短工程・高効率な抗インフルエンザウイルス薬・ザナミビル(商品名リレンザ)の合成を志向するものであり、保護基を用いずに触媒的に天然物を修飾することと同様に重要な課題である。 ザナミビルの合成上有用であると考えられる、オキシムと共役した末端アルキンを用いた検討の結果、反応に適した条件を見出したことで、これまではジアステレオ選択性が得られなかったD-アラビノースのアミノアルキニル化反応において望みの立体を有するジアステレオマーを優先的に得ることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ザナミビルの合成研究において得られた、ホウ酸と水酸基により可逆的に形成されるルイス酸・塩基対についての知見は、研究目的である触媒開発に資するものであるから。また、ザナミビルの合成研究自体も合成ルート後半まで合成法の開発が進行しており、新規の効率的なザナミビル合成法の確立に近づいたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在開発しているザナミビルの合成ルートを確立し、アミノアルキニル化反応で用いているホウ酸を触媒量に減ずる検討を行う。これにより研究目的である1,2-ジオールとホウ酸系試薬との結合形成の可逆性に関する知見を深める。その後は、当初研究目的の機能性触媒における分子内ボレート形成を検討していく。
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Research Products
(1 results)