2015 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトールの特徴的脂肪酸鎖の合成機構と生理的意義の解明
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14J12416
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山守 なつみ 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ホスファチジルイノシトール / アラキドン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルイノシトール(PI)は生体膜の主要なリン脂質の一つであり、高等動物のPIは、他のリン脂質と異なりその90%以上がアラキドン酸を有している。私の研究室ではこれまでに、PIにアラキドン酸を導入する酵素としてLPIAT1 (LysoPI AcynTransferase 1)を世界で初めて同定した。さらに、LPIAT1欠損マウスを用いた解析から、脳の発生段階において形態形成に異常があること、また、生後1ヶ月以内にほぼ全ての個体が致死となることを見出した。これらの結果から、アラキドン酸を含むPI(20:4-PI)が生理的に重要であることが強く示唆された。しかしながら、20:4-PIの生理的意義はまだほとんど明らかとなっていない。 そこで私は、線虫というモデル生物を用いて20:4-PIの生理的意義の解明を目指した。線虫には、ほぼすべての遺伝子をカバーするRNAiライブラリーが存在する。私はこのRNAiライブラリーの中から、膜輸送や細胞骨格に関わる約500遺伝子に着目し、線虫LPIAT1欠損変異体に対してRNAiを行って成長遅延など表現型を増強する遺伝子(エンハンサー)を探索した。その結果、LPIAT1のエンハンサーとして18遺伝子を同定した。これらの遺伝子は野生型の線虫にRNAiを行っても顕著な表現型は見られず、LPIAT1欠損変異体に対してRNAiを行った場合のみ、表現型の増強が見られた。今後、線虫だけでなく培養細胞も用いてこれらの遺伝子のより詳細な解析を行い、20:4-PIの生理的意義を明らかにしたい。また、私はPIの脂肪酸鎖を規定する分子としてTMEM68も同定している。今後TMEM68欠損マウスの解析を行い、新たな20:4-PIの生理的意義を明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、線虫LPIAT1変異体を用いて成長異常を指標としたエンハンサースクリーニングを行った。その結果、LPIAT1のエンハンサー遺伝子として18遺伝子を同定した。今後、同定した遺伝子のより詳細な解析を行う。また、PIの脂肪酸組成を規定する分子であるTMEM68の解析も行う予定であり、進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
線虫LPIAT1変異体を用いて行ったエンハンサースクリーニングにより、LPIAT1のエンハンサー遺伝子として18遺伝子を同定した。今後は線虫だけでなく培養細胞も用いてこれらの遺伝子のより詳細な解析を行う。また、PIの脂肪酸鎖を規定する分子としてLPIAT1以外にTMEM68も同定している。今後、TMEM68欠損マウスの解析も行う予定である。
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Research Products
(1 results)