2014 Fiscal Year Annual Research Report
児童期の教室における感情的足場かけ:実践過程と帰結の検討
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14J12517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
利根川 明子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 学級 / 小学校 / 教師 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の2つの課題について研究ならびに成果発表を行った。 第一に,児童期の教室における「感情的足場かけ(Rosiek, 2003)」の生成と実践の背景となる教師の個人内プロセスについて明らかにするため,学級担任を持つ教師の感情経験と感情表出ならびに学級の児童の感情表出を尋ねる質問紙調査の分析を行った。その結果,(1)教師の感情経験は,学級の児童と接していない時(教室外)に比べ,学級の児童と接している時(教室内)において豊富であること,(2)教師による学級の児童の前での感情表出は,教師の感情経験と有意な関連を持つこと,(3)教師評定による学級毎の児童の感情表出の程度と児童評定による感情表出の学級毎の集計値(学級平均値)の間の関連は弱い相関に留まることが示された。これらの結果については,日本教育心理学会第56回総会にてポスター発表を行った。 第二に,教室における児童の感情の個人差と学級差について検討するため,小学校4・5・6年生の学級担任と児童を対象とした質問紙調査を行い,教室での児童の感情経験と感情表出の特徴と他の要因との関連について検討した。その結果,(1)学級の児童の教室での感情経験と感情表出について,有意な個人間差と学級間差がそれぞれ存在すること,(2)学級ごとの児童の感情経験や感情表出を変動させる要因が背後に存在しうること,(3)児童の教室での感情経験と感情表出は,それぞれ児童の主観的適応感と有意な関連性をもつこと,(4)学級内の関係性や学業への取り組みに関する児童の認知の仕方は,教室での児童の感情表出と有意な関連をもつが,その効果は学級毎の学級風土の差異によって異なることが示された。これらの結果については,日本発達心理学会第26回大会にてポスター発表ならびにICAP2014にてポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学校の教室における感情的な雰囲気と,その中での個々の児童の感情経験及び感情表出が,児童の学習や対人関係のあり方,教室への適応感にどのような効果を持ちうるのかということに関して,ほぼ当初の想定通りの調査を行い,成果発表を行うことができたと考えている。また,年度をまたいで収集したデータについては,現在分析を進めており,その成果の学会発表ならびに論文作成の準備を進めている。ゆえに,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は,おおむね順調に進行しているが,一部,当初の計画と順番を変えて実施した課題がある。そのため,今後着実に進められるよう,調査先への依頼と準備を確実に進めたいと考えている。
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Research Products
(5 results)