2014 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用の機能化に基づくポーラロンスピントロニクスの創生
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14J12564
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 峻一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 有機半導体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最大目標は, 有機半導体材料を用いたスピントランジスタ(Spin-FET)のプロトタイプを作製することである. Spin-FETは電子の持つスピン自由度を用いた超高速・低消費電力が期待される夢のデバイスであり, 従来のエレクトロニクスからの抜本的なパラダイムシフトを可能にする. 申請者はこれまで注目されていなかった有機半導体材料のスピン軌道相互作用(SOC)に着目し, スピン-電圧信号変換技術の確立(Nature Materials, 2013)や有機材料中のスピンキャリアであるポーラロンの超ロバストスピン輸送(Nature Physics, 2014)を実現してきた. これらの知見に基づき有機材料のSOCを高機能化し, さらに微細加工技術などのナノテクノロジーや化学合成を最大限活用し, spin-FETの実現を目指す. その過程では, 申請者の現在所属するケンブリッジ大キャヴェンディッシュ研究所と共同研究体制を構築し, ナノスケールデバイスの作製及び提供される有機材料の特性評価を行う. その過程では申請者が樹立した世界最長のスピン寿命のさらなる更新を目指し, spin-FETに適する材料のスクリーニングを行う. 以上から最適化された有機材料およびナノスケールデバイスを用いて, スピン演算を行う舞台を整えた後, spin-FETのプロトタイプの実装と動作確認を行う. また, 本3年間研究プロジェクトは単なるデバイス作製技術だけに留まらず, スピン物性・化学合成・ナノテクノロジーを相補的に組み合わせ, さらに東大とケンブリッジ大の強固な共同研究体制をベースとし, 国際競争力のある新規な学術領域の創生を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年次の研究計画においては, ケンブリッジ大Optoelectronicsグループに客員研究員として滞在し, 本研究課題遂行に向けた最適材料の選定を行う事を目標に英国内やヨーロッパを中心とした化学合成グループとのコネクションの獲得を目指した. 同時に受入れ研究室既存の装置とスピントロニクス実験ユニットを組み合わせた磁気輸送測定装置の立ち上げを目標とした. ケンブリッジ大で行う予定であった実験に物理的に不可避な問題が発生し, 当初の予定を完遂することはできなかったが, 上記に2点に関しては十分な成果が得られた. 11ヶ月間の共同研究を通し, 特に共同研究者であるHenning Sirringhaus教授との議論を通して本研究課題に必要な材料の目星をつけ, 英国内を中心とした化学合成チーム(Iain McCulloch教授 Christian Nielsen博士, Sandrine Heutz博士, Imperial College London)から研究計画に記載された一連の材料を提供された. とくにSandrine Heutz博士との意見交換により, 高純度の金属フタロシアニンが本研究に適するスピン軌道相互作用を有することがわかり, 合成と実験のfeedback体制を整えることで新たな共同研究をスタートさせた. 計画していた材料のうち60%程度を現在スクリーニングしている. 一方で, 当初計画をしていた時間分解磁気測定の実験において, 実験的に不可避なノイズが新たに発見されたのに加え, 円安の影響で企画していた実験装置のレプリカ(複数化)は叶わなかった. 実験の大幅な遅れが予想されたが, この点を解決するために, Johannes Gutenberg University Mainz のJairo Sinova教授およびErik McNellis博士との共同研究体制を確立し, 量子化学計算からマテリアルスクリーニングを効率化させる手法へと転換した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年度も引き続きケンブリッジ大を拠点とし, さらにJohannes Gutenberg University Mainz大と共同で量子化学計算をベースとした理論サイドからのアプローチにより材料探索のさらなる効率化を図る. それと同時に, 初年度に購入することができなかった電磁石を購入し, 磁気輸送測定システムを構築する. スピントロニックデバイスの実作もスタートさせ, 磁気共鳴測定を行う. 磁気特性評価の過程得られた結果に関して, 熱効果による有機材料へスピン注入の可能性・異常な磁気抵抗測定が確認され, 現在論文執筆中である.
1.“Ionized scattering in amorphous metal oxides proved by gated Hall effect measurements” Under preparation (Nature Communications) Shun Watanabe, Josie Socratos, Kal Kulbinder, and Henning Sirringhaus 2.“Two dimensional charge transport in polymeric charge transfer salt” Under preparation (Nature Materials) Shun Watanabe, Kee Kang, and Henning Sirringhaus.
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Performance and Stability Enhancement of Dye-Sensitized and Perovskite Solar Cells by Al Doping of TiO22014
Author(s)
Sandeep K. Pathak, A. Abate, P. Ruckdeschel, B. Roose, Karl C. Godel, Yana Vaynzof, Aditya Santhala, Shun Watanabe, Derek J. Hollman, Nakita Noel, Alessandro Sepe, Ullrich Wiesner, Richard Friend, Henry J. Snaith, andUllrich Steiner
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Journal Title
Advanced Functional Materials
Volume: 24
Pages: 6046 - 6055
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Probing charge delocalization in a semi-crystalline supramolecular polymer2015
Author(s)
Kang, Keehoon and Watanabe, Shun and Broch, Katrina and Matsumoto, Daisuke and Marumoto, Kazuhiro and Tanaka, Hisaaki and Kuroda, Shin-ichi and Heeney, Martin and Sirringhaus, Henning
Organizer
APS March Meeting 2015
Place of Presentation
San Antonio, Texas, USA
Year and Date
2015-03-02 – 2015-03-06