2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J30008
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松下 隆志 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | ロシア / マムレーエフ / 現代文学 / ポストモダニズム / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ソ連崩壊後の現代ロシア文学を対象とする本研究の目的は、1990年代の急進的なポストモダニズムから2000年代の保守的なリアリズムへという急変に内在する力学を分析することで、新世紀現代ロシア文学の変容が「ロシアとは何か?」という問い──すなわちポストソ連社会におけるナショナル・アイデンティティの再定義の問題と深く結びついていることを明らかにすることである。 本年度は、ロシア・ポストモダニズムの先駆的作家と位置づけられるユーリー・マムレーエフの思想の変遷およびそれが作家の文学表現に与えた影響を分析した。マムレーエフの2000年代の思想では、かつてロシア・ポストモダニズム言説で中心的な概念だった「混沌(カオス)」や「空虚」といった概念が「ロシア的なもの」として語られ、西欧文化に対するアンチテーゼとして打ち出されている。申請者は、従来「他者なき世界」と見なされていたマムレーエフの創作世界が実は他者に対する否定の上に成り立っていたのではないかという仮説を提示し、上述した作家の思想的変遷と合わせて論じた。 こうしたマムレーエフ文学の変容は、1990年代から2000年代にかけてのロシア・ポストモダニズム文学のナショナルな変容を理解する上で重要な事例と言える。また、マムレーエフの作品を先行研究と異なる「他者」の観点から論じたことは、今後のマムレーエフ研究にとっても資するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記した通り、国内・国外(ロシア)での資料収集・学会報告・論文投稿を実施したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、上述のマムレーエフ論を含む、1990年代から2000年代のロシア・ポストモダニズム文学の変容に関する博士論文の執筆を行い、本研究課題の達成を目指す。論文の提出は夏を目処にし、本年度中の学位取得を目指す。 その他、8月に開催される国際会議ICCEESにて研究報告を予定している。
|
Research Products
(5 results)