2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J40015
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 順子 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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Keywords | 前端部神経外胚葉 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、古典的Wntシグナル経路および非古典的Wntシグナル経路が前端部神経外胚葉内のパターニング形成に関与していることを明らかにした。ウニ胚においてWntシグナルは植物極側からのシグナル因子として報告されてきていたが、本研究により前端部神経外胚葉内のパターニングにも関与していることが初めて明確となった。 これまではnodalやBMP2/4などのTGF-βファミリーがfoxQ2およびhbnの発現パターンに及ぼす影響等の解析に着目してきたが、今年度に入りWntシグナル経路の解析に着手した。まずLRP阻害下でプルテウス幼生期のFoxQ2の発現消失が見られなくなったことから、Wntシグナル経路もまたFoxQ2の発現に関わっていると考えられ、Wnt3、Wnt6、Wnt7のウニ胚における時間ごとの発現量の確認を行った。その結果、Wnt6およびWnt7に原腸胚期を中心に発現量の上昇が見られた。続いてそれらの抑制実験を行ったところ、Wnt7を抑制するとLRP抑制胚同様にFoxQ2の発現消失が生じず、後半になってもFoxQ2の発現が前端部神経外胚葉で維持され続けた。一方Wnt6抑制胚では、hbnの前端部神経外胚葉中央からの発現消失が生じず、セロトニン神経が正常胚では存在しない中央付近に集まって形成された。前端部神経外胚葉領域において非古典的Wnt経路のJNKの阻害剤を用いて解析したところ、Wnt6同様にhbnの前端部神経外胚葉中央からの発現消失が阻害されることが確認された。このことからWnt6は前端部神経外胚葉中央において非古典的Wnt経路に機能していることが示唆される結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで前端部神経外胚葉形成とTGF-βファミリーの関係に着目してきており、本年度もFezの解析を通してそのメカニズムを詳細に解析する予定でいたが、前端部神経外胚葉のパターニングにWntシグナルが関与している可能性が示唆され、研究の重要性からWntシグナルの解析に重点をおいた。当初の研究計画とは着目する因子が異なる内容になったが、ウニの神経の中枢化を解明するという目的においては、非常に重要となる成果が得られた。それらの結果を中心とした論文が本年度3月の時点で暫定的に受理されるなど、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画のひとつであるTGF-βファミリーの前端部神経外胚葉形成への影響に着目した研究とともに、今後はWntシグナルとの関係性も加えて解析を行う。また、ウニの神経細胞は前端部のみに関わらず、繊毛帯やその他の領域でも観察されることから、神経の中枢化を議論する上で、そのような神経の分散も含めたウニ胚の全神経系に着目した解析を行う必要があると考える。そこでSynaptotagmin Bの抗体を用いてウニ胚の全神経系の時空間的パターンの観察を行うと共に、バフンウニのゲノム中に存在する神経系に関わる因子を単離し、それぞれの時空間的発現パターンの解析を行う。他の生物との比較も進めながら、進化的な議論ができる段階まで研究を進めていく。
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Research Products
(4 results)