2014 Fiscal Year Annual Research Report
膵α-アミラーゼの腸内糖鎖リガンドを介する血糖値調節機構の解明とその制御
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14J40058
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊達 公恵 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 膵α-アミラーゼ / 糖鎖認識 / 小腸刷子縁膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、『膵α‐アミラーゼの糖鎖認識が、1.糖質消化、2.糖吸収、3.インスリン分泌の各段階に与える影響を明らかにし、各機能を選択的に制御する特異糖鎖を創出すること』である。今年度は、上記目的達成のため、インスリン分泌への影響を調べ、動物実験を開始した。 膵α-アミラーゼの"インスリン分泌"への影響は、膵α-アミラーゼとジペプチジル・ペプチダーゼ-4 (DPP-4) との相互作用解析により行った。膵α-アミラーゼ固定化吸着体を用いたアフィニティークロマトグラフィーとDPP-4抗体を用いたELISA法とから、α-アミラーゼは小腸刷子縁膜中のDPP-4の糖鎖を認識して結合することを明らかにした。ブタとマウスの小腸刷子縁膜でα-アミラーゼがDPP-4と共局在することも確認した。また新たに立ち上げたDPP-4活性評価により、α-アミラーゼは小腸刷子縁膜中のDPP-4活性を阻害することを見出した。特に、α-アミラーゼと結合するDPP-4の活性は、非結合DPP-4に比べ、よりα-アミラーゼによる阻害を受けることが分かった。 次に膵α-アミラーゼの糖鎖認識能と抗体反応性について、マウスと既存データの多いブタとに差がないことを確認し、マウスを用いた動物実験を開始した。様々な摂餌条件下における小腸α-アミラーゼの局在観察と血糖値測定により、膵αアミラーゼの"糖質消化"・"糖吸収"の影響を調べた。α-アミラーゼは、摂餌マウスの小腸絨毛頂端部で観察され、24時間絶食マウスでは観察されなかった。また、24時間絶食後のデンプン投与マウスでは小腸絨毛頂端部に観察されたが、グルコース投与マウスではほとんど観察されなかった。これらの結果から、小腸で検出されたα-アミラーゼは、十二指腸内在性のものではなく膵臓から十二指腸へ分泌された膵α-アミラーゼであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要テーマは「膵α-アミラーゼの糖鎖認識による糖質消化と糖吸収の影響の動物モデルの立ち上げ」と「膵α-アミラーゼとジペプチジル・ペプチダーゼ-4 (DPP-4) 活性との相互作用解析」であった。その結果、マウスでの評価を順調に進めると共に、膵α-アミラーゼがDPP-4の活性を阻害するという発見をした。本成果は、膵α-アミラーゼがインスリン分泌にも影響を与えることを示す新知見であり、おおむね順調に研究が進展しているといえる。 さらに、“膵酵素α-アミラーゼのエンドサイトーシス機構”や“Na+/グルコース共輸送体 (SGLT1) の小腸上皮細胞でのリサイクリング”を見出し、その成果は高く評価されSOCIETY for Glycobiology Travel Award を受賞し、論文投稿も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
小腸刷子縁膜中のDPP-4活性が膵α-アミラーゼ濃度依存的に阻害されることを見出したため、今後は小腸刷子縁膜からDPP-4精製を試み、精製分子同士での相互作用解析を進める予定である。 マウスでの動物実験系を立ち上げたが、組織染色に関してはこれまでのパラフィン切片では抗体によっては染色されないため、凍結切片による染色も検討する。また、血中インスリン分泌も評価項目に加える。今後は“膵α-アミラーゼの糖鎖認識”を阻害する多糖やレクチンの影響を調べることで、膵α-アミラーゼの糖鎖認識による各機能を制御する特異糖鎖の候補を選出する予定である。
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Research Products
(13 results)