2015 Fiscal Year Annual Research Report
家族展開期に対応した開放型の住宅計画論の構築-郊外独立住宅地の持続再生を目指して
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14J40073
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
梅本 舞子 千葉大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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Keywords | 訪問型保育 / プライバシー / 住宅計画論 / 共助 / 住宅地計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.訪問型保育の利用とプライバシー獲得を両立しうる住戸計画の解明 高齢者向けサービスとは異なり、利用主体となる親が不在時の利用も多い訪問型保育では、求められるプライバシーの要素や獲得の仕方も異なる事が予測される。しかし、訪問型保育におけるプライバシーと住戸計画の関わりは未解明である。 そこで、A市訪問型保育利用者へのインタビューや間取りの採取調査等を通して、次を明らかにした。重視されるプライバシーの要素は、見られたくない場や物を隠す事ができる「情報の留保」である。これをサポートしうる要件として、従来から指摘される寝室の他、台所等のプライバシー要求レベルの高い場が、訪問型保育が展開される居間よりも奥に配置された動線計画が有効である。また近隣との境界面の計画も影響しており、近隣との視線や音の遮断・交流の選択肢のある計画では、訪問型サービスにおけるプライバシー獲得水準も高い。以上2点を両立しうる計画として、アクセス側とこれとは反対側にも開口部を備える両面性のある計画が有効であろう事を指摘した。 2.非親族間の共助活動を支えうる住宅地計画の要件の解明 家族間扶養システムとして「近居」の見直しが進むが、大都市圏では近居関係にない世帯が相対的に多く、非近居世帯の子育てや老親扶養を、地域や市民レベルで支え合う共助の拡充が期待されている。そこで、未解明である「非親族間の共助活動と住宅地計画との関連性」について研究を進めた。 具体的には、A市訪問型保育の利用者・担い手各々の居住地や、共助活動時に担い手が負担する移動距離の分析を通して、次を明らかにした。月1回以上の頻繁な共助活動を求める場合には、担い手が負担しうる移動時間は多くとも15分程度が許容範囲である。この範囲内の開発時期が異なる住宅地間では、異世代同士での共助活動が根付きやすく、持続可能なエリアとして成立しうる可能性がある事を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究実績概要に示した通り、これまでに未解明であった訪問型保育利用におけるプライバシー獲得と住戸計画の関係、および訪問型保育という共助活動を定着させうる住宅地の要件について明らかにし、審査付き論文1本、および学会発表論文3本としてまとめる等、一定の成果をあげる事ができた。 しかしながら、年度当初予定していた高齢者向け在宅福祉サービス利用者を対象とした調査、ならびに別地域で実施予定であった訪問型保育利用者を対象とした調査は実施できていない。理由は、実施時期直前に筆者が急遽長期入院せねばならなくなり、調査実施が困難となったためである。 そのため、残り1年でこれらの遅れを取り戻す必要がある。今後半年間は、出産・育児のために研究を一時中断するが、その間も調査協力者とはメール等で頻繁に連絡を取り、復帰後早急に調査に着手できるよう準備を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、①別地域での訪問型保育サービス利用者、②高齢者向け在宅福祉サービス利用者、③シェア居住転用事例への調査の3種の調査を実施し、各々で求められるプライバシーの要素を整理しつつ、住宅・住宅地計画との関わりを明らかにする。なお、先行研究による成果が蓄積されつつある②や③については、それらの内容を本研究の仮説に基づいて再解釈する事を主な作業とする事で、研究の遅れを取り戻す予定である。 また、最終的に導き出した「開放型の住宅計画論」は、郊外の持続再生につながりうる手法として昇華しなければ意味がない。そこで、郊外居住者や供給・管理会社を対象に、住宅・住宅地再整備計画に関する提案検証型の調査を実施し、「開放型の住宅計画論」実践・応用上の課題も明らかにした上で、まとめとする。
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Research Products
(4 results)