2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J40084
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢森(酒井) 小映子 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 蘭学 / 世界観 / 漢学 / 儒学 / 藩 / 洋学 |
Outline of Annual Research Achievements |
①渡辺崋山と小関三英を主な分析対象とし、蘭学者の社会的位置づけを解明する作業を行った。崋山については、殖産政策をめぐる思想の展開を当該期の社会や思想状況の中で考察し、論文「天保期殖産政策をめぐる思想―渡辺崋山と大蔵永常を事例に―」(川口浩編『日本の経済思想―時間と空間の中で―』)にまとめた。また史料が少なく研究が遅れてきた三英については、山形県鶴岡市・酒田市、杏雨書屋などで史料調査を進め、三英と庄内地域の交流を明らかにし、論文「江戸に出た地方蘭学者と地域の交流―小関三英の書簡から見える庄内地域―」(『書物・出版と社会変容』19号)を発表した。 ②京都大学附属図書館、蓬左文庫、静嘉堂文庫、鹿児島大学附属図書館、国文学研究資料館、古河歴史博物館などにおける史料調査をもとに、蘭学者の著訳書および典拠書物を分析し、蘭学者の世界観を考察した。 ③新たに蘭学と漢学(儒学)の関係を解明する作業に取り組んだ。①②の研究成果を有機的に結び付けるためには、近世における諸学問の土台であり、近世の思想・政治・社会に強い影響を与えた漢学との関係を明らかにすることが不可欠であると考えたからだ。研究史を整理するとともに、小関三英と渡辺崋山が一つの蘭書をどのように理解・翻訳したのかという事例を分析した。そして蘭学を受容し世界観を形成する過程で、下地となる漢学がどのような役割を果たしていたのかを考察し、研究報告を行なった。 ④これまで無意識的に使用してきた言葉そのものを再検討し(「洋学」「蘭学」「漢学」「儒学」「藩」など)、それぞれの言葉の意味内容の変遷や研究史上の使われ方を踏まえたうえで、今後の研究の中でどのように定義して用いるのかを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き史料調査と分析を進め、論文として公表することができた。また研究のさらなる展開のために、「蘭学と漢学」という新たなテーマにも取り組んだ。昨年度に課題となっていた分析用語の検討および研究史の批判的整理を行い、研究の軸となる「藩士の蘭学」という視角を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「藩士の蘭学」というテーマでこれまでの研究成果をまとめ、三年間の集大成として学術書を刊行する準備を行う。その発表に際しては、最新の研究動向を踏まえるとともに、基礎史料の調査を徹底したい。
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Research Products
(5 results)