2014 Fiscal Year Annual Research Report
網膜前駆細胞の空間配置と核・細胞体移動の研究:集団協調と細胞運命選択のメカニズム
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14J40113
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田崎(齋藤) 加奈子 名古屋大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 神経発生 / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜前駆細胞の集団において、細胞周期進行に伴って組織の丁端面(apical)と基底面(basal)間で細胞核の移動を行うINM(Interkinetic Nuclear Migration)は均質ではないと過去の自身の研究で知ったが、最近の同研究室による研究により、網膜と同じく中枢神経系である大脳において、マウスとフェレットという、異種動物間ではINMの挙動が大きく異なるという結果が、報告された(Okamoto et al. 2014:共著者)。これら違いはそれぞれの組織のもつ細胞密度の違いからもたらされているのではないかと同論文で同時に予測され事より、『いったい幾通りの異なるINMのパターンがあるのか?』 という疑問がさらに深まりつつある。 そこで、核や細胞膜標識するシステム、LoxP,Creプラスミドのelectroporation法などを用いての組織内の一定数の細胞を散発的標識、 細胞周期のS期からM期を標識するシステムを組み合わせた、網膜及び大脳のスライス培養を用い、ライブイメージングし、トラッキングとMSD解析等を行っている。また、このINMがヘテロである理由に答えるべく(basal突起を相続した娘細胞が早く動くと考えるが他に理由はないか?)、例えば分化度と核移動様式の関係について明らかにするため、細胞の増殖を制御するHippo経路のコアクチベーターであるYap遺伝子の活性化型のプラスミドをelectroporationする事により未分化性を維持させた状態でINM軌跡を解析するなど、分化度を変化させる事によるINMの様式の変化なども網羅的に把握し,パターンを細胞形態(basal突起の相続や新生に注目する)、細胞分化度,細胞周期進行状況などとの関係に注目して分析・分類している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経前駆細胞がそれぞれ行うINMをどう「うまく寄せ集めている」か、「集団としての折り合い」のありよう、その原理を明らかにしようとしているが、実はこの問題は難題である。特定の分子を奪い去りその結果を組織単位で評価・判定するという、多くの従前研究がとってきたアプローチだけでは充分ではなく、「個」と「集団」の両方を動的にとらえた上での分析が求められる。しかし、当初から計画していたライブ観察結果の丹念な定量解析等に加えて、自らの観察を通じて着想した「力学的要因の関与」を新たに問うべく、具体的には、(1)培養細胞ストレッチ装置を用い、スライス培養の状態で組織に圧縮を加える。(2)母体を生存させたまま、マウス胎児の脳や網膜にアガロースゲルを注入し、脳室圧等を高くさせることにより組織を伸張させ、その状態で数日間飼育する。等、細胞過密や圧縮・伸展などの条件を三次元環境下に付与することができるような実験系の自らの開発を交えつつ、研究を展開することにより、難題に対して、進展を得ている。また、拡張的に展開中のいくつかの新実験群にも大きな突破の期待があり、1年目の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た様々なイメージングの情報をもとに、ある核・細胞体の動きに対して周囲細胞からどういう力学的負荷が与えられ,当該細胞はどうそれに応じるか? 能動的な成分と受動的な成分はどの程度ずつ貢献しているのか? という問いに答えるべく、核・細胞体同士に働く「斥力」について,実測値ではなく動画で認める動きを参考にしてパラメーター設定し、解析する。さらに、力学的状況の把握・測定のため、apical面、basal面、apicobasal軸に対してレーザー照射し切断端の反応を見ることで残留応力を調べ事や、原子間力顕微鏡(AFM)によって組織に対する加圧、引っ張りを行い、組織の力学的状態を把握する。これらの力学的状況が壁の凹凸に関して逆である大脳皮質原基と網膜を比較する。 また、自ら開発した実験系を用いる事で、物理的な力を組織の外側から加える事により細胞密度や細胞形態を変化させる事に成功しているが、これらINMの挙動にどのような変化が見られるか、これらについてもライブイメージングを行いトラッキングとMSD解析等を行う。また、細胞形態を変化させることで細胞体の動きに対する能動成分を無くさせることにより、能動的な成分と受動的な成分の程度を、構築しているシミュレーションと組み合わせることで明らかにしたい。さらに、外側からの物理的な刺激により、増殖や分化に影響を及ぼす可能性も考え、固定組織にを用いた免疫染色法等により、詳細な観察及び解析も行う。
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