2016 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・モダンの大学における「教養」の意義 -教養主義に関する政治哲学的再検討
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14J40153
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤本 夕衣 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 教養主義 / 旧制高校 / 新渡戸稲造 |
Outline of Annual Research Achievements |
新渡戸稲造は、戦前の日本の教養論の構築に大きな影響力を与えたと考えられている。特に、旧制一高の校長であった時期に、その人格を通して学生に影響を与えたことが、教え子の伝記などを通じて伝えられてきた。そこで、日本の教養主義の変遷について考察を深めていくにあたり、新渡戸がどのような教育理念をもっていたのか。あるいはどのような影響力を一高で与えていたのかについて、新渡戸の大学論やアメリカ留学の経験、一高時代の生徒たちの記録などをてがかりに考察を行った。具体的には以下の通りである。 1.新渡戸の思想:新渡戸の思想については、クラーク博士の影響、内村鑑三とのかかわりなどを通して、キリスト教精神があると指摘されてきた。そうしたキリスト教の影響が、新渡戸の教育論にどのようにあらわれているのか考察した。また、新渡戸がアメリカやドイツへの留学を通して、どのような教育理念を受容し、また何にたいして批判的であったのかといった彼の高等教育観をみることを通して、一高をどのような場として認識し、校長の職務にあたっていたのかということを考察した。 2.新渡戸の一高での具体的な影響:旧制高校のカリキュラムの変遷などを整理しながら、新渡戸の着任前後でどのような変化があったのかについて考察を行った。その結果、明らかになったのは、新渡戸の影響は、公的なカリキュラム上での改革という形ではなく、たとえば学生を自宅に招くなど、学生個人個人との人格的なふれあいのなかで、その思想を伝えたという点にあったということが分かった。授業においては、倫理学などの科目のなかで、古典の講読を行っていたことも明らかになった。今後、新渡戸が女子大の設立などにかかわるなかで、どのような教養観をもち、伝えていったのかということを、明らかにしていくことが、日本の教養主義を多角的に再検討するうえで重要な課題になることを明らかにした。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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