2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J40163
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
坪田=中西 美貴 上智大学, 総合グローバル学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺産 / 境界 / 先住民 / 移行期正義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は自他を分ける、さらには自他を包括する契機としての台湾先住民について、遺産(heritage)という面から考察した。 民主化の過程で台湾は多文化社会としての自己表象を始めた。当初それは中華という単一文化・民族表象へのアンチテーゼ的な面が強かったが、近年は多様性それ自体が自らのものとして用いられる現象を生んでいる。 台湾先住民の過去や文化が台湾に住む人々にとっての「遺産」であると考えられるようになったのは、2011年に公開された映画「セデック・バレ」がきっかけと考えられる。この映画は日本統治下の1930年にセデックの人々が起こした武装蜂起事件、すなわち霧社事件を題材に、台湾人ならばこの出来事を知っているべきだと考える監督の明確な意思の下に作成された。この映画では、登場人物の殆どがセデックという先住民そして日本人であり、現代台湾社会においてマジョリティである漢人系住民は殆ど登場しない。しかし台湾先住民を主役としながらも事件が台湾島の経験として受け入れられたことで、血縁関係を持たない人々にとっても、先住民の経験や文化が「受け入れ」られるものとなり、非先住民による先住民文化の表象が可能だと思われるほどに展開していった。その意味において、台湾先住民の経験や文化は、台湾に住む人々の「遺産」としての共有が可能だと考えられるようになっている。 しかし実際のところその「共有」は現在の台湾社会における力関係を反映し、不平等な「共有」にとどまっている。「遺産」を用いた立ち位置の表明の違いは、これまで以上に先住民と非先住民との間の差異を明確にしている。
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)