2016 Fiscal Year Annual Research Report
薬物依存症者に対する治療共同体モデルの試行と効果に関する研究
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14J40189
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
引土 絵未 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所薬物依存研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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Keywords | 治療共同体モデル / エンカウンター・グループ / 効果 / アクション・リサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①日本型治療共同体モデルの実践課題・必要要素の明確化、②日本型治療共同体モデルの効果測定の2点を研究課題とした。①では、調査ⅰ:アクション・リサーチの方法を用いた日本型治療共同体モデルの導入、調査ⅱ:治療共同体研究会による日本型治療共同体モデル実践上の課題の集約、調査ⅲ:グループインタビューによる治療共同体モデルの指標と必要要素の抽出の3つの方法を用いた。②では、治療共同体モデル導入を試みる民間リハビリ施設において、効果測定尺度を用いた自記式質問紙調査を実施し、その効果を検証した(調査ⅳ)。以上の4つの研究方法に基づき、研究経過と得られた結果を以下に示す。 調査ⅰ:アクション・リサーチの方法を用いた日本型治療共同体モデルの導入では民間リハビリ施設7施設に展開された。このような他施設への展開において有機的な機能を果たしたのが、次の調査ⅱ治療共同体研究会であった。 調査ⅱ:治療共同体研究会では、治療共同体モデル実践上の基礎的な知識・技術を提供するための講義やデモセッションなどを実施した。また、日本型治療共同体モデル実践上の課題について共有し、解決策を模索する場として機能した。 調査ⅲ:治療共同体研究会参加者に対して、治療共同体モデルおよびTCエンカウンター・グループ実施上の指標と必要要素に関するグループ・インタビューを実施した。 調査ⅳ:治療共同体モデル導入を試みる民間リハビリ施設における自記式質問紙調査による効果測定では、TCエンカウンター・グループを導入する3施設において、グループ初回・6か月・1年後の変化を測定した。その結果、3施設の半年間のグループ前後の得点について有意差が認められ、エンカウンター・グループに一定の効果があることが認められた。一方、1年後の得点差では有意差が認められず、また、3施設間比較を実施したところ、1施設で得点の減少が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定期的な治療共同体研究会の開催により、情報収集の場となるだけではなく、各地の実践者とのネットワーク構築にも貢献した。結果として、調査フィールドは少しずつ拡大し、「依存症分野における一種のムーブメントへと発展しつつある」との評価を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、民間リハビリ施設における治療共同体モデルのモニタリング(調査ⅰ)を継続すると同時に、定期的に治療共同体研究会を開催し、実践上の課題を集積しその解決の場として提供する(調査ⅱ)。また、これまでの治療共同体モデルは経験的知識・技術に依拠した体験的学習により伝承されてきたが、遠隔地など人的資源の交流の困難な地域では、施設スタッフのみでの治療共同体モデルの維持・継続が困難なことがあきらかになってきた。そのため、治療共同体モデルの補助教材としてのワークブック及びファシリテーションガイドを作成することとなった。その基盤となるのが、調査ⅲのグループ・インタビューである。これらのデータを分析し、ファシリテーションガイドの基礎項目を作成する。調査ⅳ効果測定では、調査デザインを修正し、効果に影響を及ぼす要因について明らかにする。 これらの調査結果を総括し、最終的な成果報告として、治療共同体モデル全国研修を開催し、より効果的な治療共同体モデルの普及に努める。
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Research Products
(5 results)