2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15002005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早野 龍五 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (30126148)
|
Keywords | 反物質 / 反水素原子 / 反陽子 / CERN研究所 / 反陽子ヘリウム原子 / レーザー分光 / 基本物理定数 |
Research Abstract |
本研究はジュネーブのCERN研究所において、1.反水素原子の分光、2.反陽子ヘリウム原子の分光、の二つを高精度で行い、物質と反物質の対称性を高精度で検証することをめざして推進している。 このうち反陽子ヘリウム原子については、光学周波数シンセサイザで較正した狭線巾のパルスレーザーを用いて従来よりも10倍の高精度で分光を行い、これと三体量子電磁力学計算とを組み合わせた解析から、反陽子・電子の質量比1836.152674(5)と決定し、学術誌に発表した。これは、陽子・電子質量比1836.15267261(85)に迫る精度であり、科学技術データ委員会が現在進めている基礎物理定数推奨値の改訂に使用されることが内定した。更に一桁精度を向上することをめざし、二光子分光法によってドップラー巾を抑えるテスト実験を行い、成功した。これにより、次年度には陽子質量に匹敵する精度で反陽子質量を決定できる見込みである。 一方、反水素原子のレーザー分光に向けて、反水素原子をトラップするための装置の開発・建設を行なった。これまで反水素原子はペニングトラップ中で反陽子と陽電子を混合して作ってきたが、そのままでは生成された反水素はトラップから飛び出して壁で消滅してしまい、分光不可能である。そこで、ペニングトラップに更に超伝導八重極磁場を重ね、磁場勾配で反水素原子をトラップすることを目指した、新装置を建設し、八重極磁場をかけた状態で反水素原子を生成することに成功した。次年度は反水素の捕獲確認を目指す。 また、反水素原子生成の副産物として、反陽子+水素分子イオン→反陽子水素原子という反応の可視化に成功し、学術誌に発表した。この反応は素粒子四個のみが関与する簡単なものであるにもかかわらず、反応の詳細が、第一原理計算の予言と食い違っていることが見いだされた。今後反陽子を用いた化学反応の研究を進める事で、低温での化学反応の詳細理解が進むと期待される。
|
Research Products
(8 results)