2003 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌シンビオバクテリウムのポストゲノム解析〜その絶対環境依存性の分子基盤
Project/Area Number |
15013255
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上田 賢志 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (00277401)
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Keywords | Symbiobacterium thermophilum / 共生 / ゲノム / Bacillus / 環境依存性 |
Research Abstract |
S.thermophilum(ST)の全ゲノム配列の解読をアノテーションを含めて完了した。STゲノムの最も特徴的な点は、高いG+C含量(68.7%)にも関わらず、BacillusやClostridiumに代表されるFirmicutes(低G+Cグラム陽性菌群)に高い類似性を示すことであった。それは蛋白質のアミノ酸配列の相同性において顕著であるとともに、内生胞子形成に関与する遺伝子群が存在することからも支持された。細胞観察により、STは実際に胞子を形成することが確認され、高G+C含量生物で初めての胞子形成菌であることが明らかになった。また、代謝面においては、アブラムシ細胞内共生細菌Buchneraのゲノムにみられるような特定の代謝系の完全な脱落は認められず、この菌が特定の栄養を要求しているのではなく、複数の環境条件が総合的に整うことを必要としているという我々のこれまでの観察を支持していた。また、これまで原核生物ゲノムには1ゲノムあたり数個しか見出されていなかったGroup II intronが25箇所に見つかるなど、遺伝学的にも全く新しい知見を与える配列情報が得られた。 ゲノム解読と並行してSTの生理に関する研究も鋭意進め、本菌の増殖を支持する具体的な生化学的要因(ペプチド/K^+イオン/CO2ガス)を明らかにした。また逆に、高倍率の透析培養によってSTが顕著な単独増殖を示すことを発見し、この菌がおそらく自己の増殖に阻害的な代謝産物を生成し、それを除去することもこの菌の増殖に必須の要因であることをほぼ明確にした。さらに、STおよびその類縁菌の環境分布に関する探索を行い、この菌群が土壌や家畜糞便などを中心とした陸性環境中に普遍的であると同時に、海洋環境においても高い頻度で存在しているという実験的証拠を得た。
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