2003 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病脳低密度膜画分における脂質ヒドロペルオキシドとアミロイドβ蛋白
Project/Area Number |
15016016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
玉岡 晃 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (50192183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 昭英 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (40301080)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ蛋白 / アポリポ蛋白E / 酸化ストレス / 過酸化脂質 / thiobarbituric acid reactive substances / 低密度膜画分 |
Research Abstract |
アポリポ蛋白E(APOE)のタイプ4(APOE4)はアルツハイマー病(AD)全般に共通する遺伝的危険因子であるが、APOE4とADの発症に関連する病的機序については未だ確立していないのが現状である。我々はアミロイドβ蛋白(Aβ)が酸化ストレスによって増加すること、Aβそのものがフリーラジカルを産生すること、in vitroではあるがAPOEのアイソフォーム依存性の抗酸化作用が証明されたこと、などより、酸化ストレスとAPOEとの関連という視点から、検討をすすめてきた。まず、ヒト脳の過酸化脂質をthiobarbituric acid reactive substances(TBARS)として測定したものでは、ADやダウン症候群では対照脳よりもTBARSが有意に増加しており、APOEのタイプ別に見ると、AD群の中で、APOE3ホモとAPOE4ホモの間で有意差が認められた。次に我々はAPOEノックアウト(APOE-KO)マウスを用いて同様な検討を行った。マウスの野生型APOEはヒトAPOE4,に相当するものと考えられているが、APOE-KOマウスでは野生型よりもTBARSが有意に増加しており、これはAPOEの抗酸化作用を示唆するものと考えられた。更にAPOE4ノックイン(APOE4-KI)マウスとAPOE3ノックイン(APOE3-KI)マウスとを比較した。有意差には至らなかったが、APOE4-KIにおいてE3-KIよりもTBARSの増加傾向が認められた。 Aβの産生部位と考えられている脳の低密度膜画分(LDM)ドメインを精製して比較した場合も、同様の傾向が認められた。本研究では、APOE-KOマウスにおいて有意な酸化ストレスの亢進が認められ、APOEが抗酸化作用を有する司能性が示唆された。また、有意差には至らなかったが、APOE4-KIマウスにおいてAPOE3-KIマウスより過酸化脂質の増加傾向が認められ、APOE4がAPOE3よりも抗酸化作用が乏しい可能性が示唆された。本研究では証明には至らなかったが、APOE4→酸化ストレスへの脆弱性→Aβの神経毒性増強→神経細胞死促進→AD発症という仮説の合理性は更なる検討に値するものと考えられた。今後さらに対象数を増やすとともに、特異的な過酸化物の測定やLMD以外の画分に対する検討も含めて解析していく予定である。
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Research Products
(22 results)
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[Publications] Kalaria RN: "Cerebrovascular amyloidosis and dementia"Curr Med Che-Immun Endoc & Merab Agents. 3. 317-327 (2003)
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[Publications] Ishii K: "Isolated peroneal nerve palsy complicating weight loss due to anterior pituitary hypo function"Eur J Neurol. 10. 187-188 (2003)
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[Publications] Ishii K: "Pravastatin at 10mg/day does not decrease plasma levels of either amyloid-beta (Abeta)40"Neurosci Lett. 350. 161-164 (2003)
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[Publications] Saido TC: "Discussions on role of neprilysin and degrading system"Psycho geriatrics. 4. 13-18 (2004)
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[Publications] Matsuda K: "Discussions on laminin as possible biomarkers for neurodegenerative dementia"Psychogeriatrics. 4. 39-44 (2004)
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[Publications] Urakami K: "Discussions on phosphorylated tau and other biomarkers"Psychogeriatrics. 4. 45-50 (2004)
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[Publications] 玉岡 晃: "脳脊髄への転移"Modern Physician. 23. 353-355 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "Insulin-degrading enzyme(IDE)"日本臨床. 61(増刊号9). 54-61 (2003)
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[Publications] Ishii K: "MRI of idiopathic lumbosacral plexopathy"Neurology. (on line)(in press).
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[Publications] 玉岡 晃: "眼輪筋反射、眉間反射、D輪筋反射"CLINICAL NEUROSCIENCE. (in press).
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[Publications] 玉岡 晃: "アルツハイマー病治療薬の現状と問題点"分子細胞治療. (in press).
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[Publications] 玉岡 晃: "アルツハイマー病:スタチンによるコレステロール制御"BRAIN MEDICAL. 1. 33-40 (2004)
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[Publications] Akira Tamaoka: "Paramyotonia congenita and skeletal sodium channelopathy."Intern Med. 42. 769-770 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "重症筋無力症に伴った筋萎縮と運動ニューロン疾患との鑑別が困難であった症例"こころの臨床a・la・carte. 22(増刊号). 98-100 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "アルツハイマー病治療薬"薬事日報. 9820. 20 (2003)
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[Publications] 石井 一弘: "Down症候群"日本臨床(別冊)領域別症候群シリーズ. 39. 427-430 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "知の螺旋"茨城県医師会報. 589. 47-48 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "痴呆症状"CLINICAL NEUROSCIENCE. 21. 382-387 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "アルツハイマー病治療薬としてのスタチンの可能性"Molecular Medicine. (in press).
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[Publications] 玉岡 晃: "新体系看護学8疾病の成り立ちと回復の促進 (6)神経・筋疾患、内分泌疾患"メヂカルフレンド社(黒岩義之, 紫芝良昌編). 13 (2003)
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[Publications] 玉岡 晃: "整形外科診療実践ガイド"文光堂(守屋秀繁編)(in press).
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[Publications] 玉岡 晃: "痴呆(医食同源ブック2)"実業之日本社(野地眞文編)(in press).