Research Abstract |
大学での教師志望の学生を対象とした理科の実験教育を通して感じられることは,岩石や鉱物など自然の物質に対する理解が極めて乏しいことである。鉱物は地球や月,惑星の固体部分を構成する基本的な物質で,極めて身近にある物質である。また,日常生活に利用される多くの無機素材にも密接に関係している。子どもたちや学生は鉱物に関心はあるが,学校では分類や名称の学習が中心となり,その奥に潜む不思議ないろいろな性質や特徴について触れることが少ないので,興味関心が発展しない。これは,教師自身の鉱物への理解が乏しいことや,教育現場に適切な教材が少ないことにもよる。 本研究は,代表者がこれまで培ってきた学生実験での経験と専門の結晶学の蓄積を活かし,鉱物という物質に対して,中学校の生徒から大学生,学校での理科教師が,その興味と目的に応じて活用できる教材の開発を目的としている。内容は,鉱物結晶の肉眼観察による分類,薄片による岩石の鉱物組織の顕微鏡観察,偏光の理解,結晶の構造の理解,結晶と回折現象,結晶外形と原子配列の示す対称など,鉱物結晶の理解に関連する物理的化学的な要素,数学的な要素などをできるだけ平易にした総合的な教材を目標としている。これによって,教師・教師志望学生に鉱物という自然の創造した物質への興味関心を深め,物理,化学,数学等との関連の理解を深め,結果として,こどもたちに理数科好きを持続させることを念願としている。 本年度は,主として(1)これら教材作成の骨格について検討,(2)顕微鏡観察のための薄片試料について,どこでもだれでも作れる方法の考察と提示,(3)身近な鉱物結晶標本の視覚資料の作成をすすめた。偏光,回折現象,結晶構造など基礎的概念の理解のための教材作成が今後の課題となる。
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