Research Abstract |
最近では,認知発達研究において新たな見解が次々に示されており,その中には,子どもの科学概念の獲得と変化に関するピアジェの理論に対する挑戦となっている研究が数多く見られる。本研究では,今年度,ピアジェが具体的操作期とみなした年齢層の子どもたちを中心に,近年の研究成果に基づき,幼年児の科学学習コンピテンスの再評価を中心に行った。 ピアジェが具体的操作期や前操作期,感覚・運動期とみなした幼い子どもたちが有する科学的な有能性を示す研究は1980年代より世界中で続々と提出されている。それらの成果をレビューしたところ,今日の研究成果として,素朴物理学,素朴生物学のような大まかな「領域」を子どもの初期の認知や思考に想定することが可能であり,子どもたちは,発達の極めて初期から,特定の領域に関して抽象的な科学的思考を行うことが可能であると言えた。ただし,より年長の子どもや成人を対象とした研究より,特定の領域内での論理的な科学的思考は,その領域固有な科学知識・言語・経験に依存するため,個人差や領域の違いによる影響が指摘されていた。上記作業に関連して,科学教育カリキュラム研究分野で著名なピーター・フェンシャム教授(当時客員教授として在日中)を招聘し,子どもたちの科学学習有能性や教育適時性の問題について,多面的に検討を行った。その成果の一部は,海外の学術雑誌及び文部科学省編集雑誌に掲載され,国内外の関連学会や関係諸機関に公表された。 続いて,本研究では,日米初等理科カリキュラムや教科書を例に,その学年配当や学習内容に関して,詳細に比較・検討を行うと同時に,韓国のプロジェクト学習や,米国のサイエンス・スタート,イタリアレッジョ・エミリア・アプローチのように,科学教育を幼児向け教育活動の中心に据えた興味深い実践例に関する資料を収集,分析し,現在これらの成果を発表準備中である。
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