2004 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀中国における『四書大全』検証運動の思想史的社会史的意義
Project/Area Number |
15021202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 秀一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80190586)
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Keywords | 四書大全辯 / 崇道堂四書集註大全 / 朱子四書全義 / 朱子学 / 善本 |
Research Abstract |
本年度は、「清初四書注考二題」と題する報告書を作成することで、明清鼎革期における四書注の時代性を考察した。第一章「宮城県図書館蔵順治年間刊行四書大全辯考」では、同館所蔵の四書大全辯順治本を善本と認定しつつ、テキスト間の文書配列の異同に時代の混乱を読み取った。該書は、同館のほか、国立公文書館内閣文庫(昌平坂学問所由来と紅葉山文庫由来の2部)、東京都立中央図書館,静嘉堂文庫、尊経閣文庫、蓬左文庫にも収められるが、文書の有無や配列が各本各様である。それらの差違を比較した結果、宮城県図書館蔵本は、文書の数が他の本に較べて最も多く、それらの配列も合理的だとみなせ、また順治十三年以前成立の静嘉堂本を整序したテキストだと推定される。第二章「東北大学図書館蔵清初四書注考」では、同館所蔵の崇道堂四書集註大全と朱子四書全義との解題を記した上で、清初の四書注と時代思潮との関連を考察した。崇道堂四書集註大全は、張廷玉と朱錫〓による共編の改訂版四書大全である。康煕十八年に完成した同書の本文は、上に大全、下に集註が掲載され、この形式それ自体がこの書物の特徴だとみなせる。撰者は、博学の目的としての「帰約」を達成すること「自得」することをすすめる。朱子四書全義は魏裔介の編著であり、かれによる康煕二十四年の原序があるのだが、刊行は康煕五十一年である。朱熹の或問に対する信頼がこの書物の特徴であり、書物の編纂形態にもそれはあらわれる。魏裔介は、或問の思想の枠内においてではあるが、学問の目標を「心と理」との一体状態に至る点に据える。以上2点の書物は、いずれも朱熹自身の注釈に回帰しつつ四書の精神を体得しようとする清初期の朱子学の一翼を担う書物であり、四書大全辯順治本と較べると、康煕朝の学術傾向をより如実に反映する注釈書だとみなせる。また、上記報告書の姉妹編として、「明清四書注釈書関連二表」を作成した。
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Research Products
(3 results)