2003 Fiscal Year Annual Research Report
『三国志演義』および明清期の「三国志物語」作品の出版システムについての研究
Project/Area Number |
15021211
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中川 諭 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (20261555)
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Keywords | 三国志演義 / 三国志平話 / 三分事略 / 版本 / 北方文化 / 出版文化 / 清代 / 毛宗崗本 |
Research Abstract |
本年度はまず『三国志平話』と『三分事略』を詳細に比較検討することを通して、『三国志平話』の出版システムについての研究を行った。この2つのテキストは同内容ながらも少なからず文字の異同が存在する。そこには『三国志平話』の方が優れている例、『三分事略』の方が優れている例の両様が存在する。よって『三分事略』は時代が下がってからの覆刻本ではあるが、直接『三国志平話』を底本にしたものではない。また『三国志平話』には北方方言の音韻の影響によって文字を誤っていると思われる例が多数存在する。よって『三国志平話』の本文は、北方地域の文化の影響を受けて成立したものである。そして『三国志平話』のような文章をしたテキストは多数存在していて、その中で現存しているものが『三国志平話』と『三分事略』なのであろう。以上のことを「『三国志平話』と『三分事略』」と題する論文において論じた。 次に『鼎鐫按鑑演義古本全像三国英雄志伝』(以下、「継志堂本」と称する)と題する『三国志演義』の一版本について検討を行った。この継志堂本は簡本系の英雄志伝グループに属する版本であり、『新刻按鑑演義全像三国英雄志伝』(楊美生本)や六巻本『三国英雄志伝』と比較的近い関係にある。またこの本は清の雍正十二年(1734)に出版されている。雍正十二年といえば、通行本である毛宗崗本がすでに成立している時期である。にもかかわらず継志堂本のような本が出版されていたということは、毛宗崗本の普及は清代の末期になってからなのであり、それまでは『三国英雄志伝』など明代以来の版本が依然として出版され続けていたということを示すものである。以上のことを、「関於継志堂刊《三国英雄志伝》-兼論清代的《三国演義》出版状況-」と題して口頭発表を行った。また論文と執筆し公表する予定である。
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Research Products
(1 results)