2003 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の化学走性の可塑性に関わる神経回路と機能分子の同定
Project/Area Number |
15029213
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 雄一 東京大学, 遺伝子実験施設, 助教授 (40192471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國友 博文 東京大学, 遺伝子実験施設, 助手 (20302812)
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Keywords | C.エレガンス / 行動可塑性 / 感覚順応 / インスリン経路 / 化学走性 / PI3キナーゼ / PTENフォスファターゼ / 連合学習 |
Research Abstract |
我々は線虫C.エレガンスの化学走性行動に関し、以下のような学習を見出している。すなわち、通常の線虫は水溶性誘引物質であるNaClに対して正の化学走性を示すが、線虫を餌の非存在下でNaClに一定時間晒すと、その後NaClに対して負の走性を示すようになる。すでに、線虫のインシュリンホモログINS-1、インシュリン受容体ホモログDAF-2、PI3キナーゼAGE-1の各変異体がこの学習に欠損を持つこと、すなわち、これらの変異体ではNaCl処理を行ってもほとんどNaClへの化学走性が低下しないことを明らかにしている。さらに、AGE-1がNaClを受容する感覚神経、ASE神経で働くことを明らかにしている。本年度の研究では、PI3キナーゼと逆の働きをするPTENフォスファターゼの線虫ホモログ、DAF-18の機能について解析した。def-18の変異体は、通常の状態でも。NaClへの化学走性が低下していた。daf-18変異体のASE神経で正常型のdaf-18遺伝子を発現させるとこの化学走性の低下が回復したことから、DAF-18もASE神経で働くことが明らかになった。daf-2;daf-18二重変異体ではこの化学走性の低下が回復し、daf-2単独変異体に比較して学習能が回復していた。すなわち、daf-2とdaf-18が同じ過程で逆の機能を持つという、分子機能からの推定と矛盾しない行動が見られた。これらの結果より、NaClによる条件付け処理により、インシューリンシグナル伝達経路がASE神経で働き、AGE-1によってPIP3が生成され、これがASE感覚神経の機能を負に制御するというモデルが考えられる。DAF-18の機能が低下すると、恒常的にPIP3レベルが上昇し、ASEの機能が抑えられて化学走性が低下すると考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hanazawa, Kawasaki, Kunitomo, Gengyo-Ando, Bennett, Mitani, Iino: "The Caenorhabditis elegans eukaryotic initiation factor 5A homologue, IFF-1, is required for germ cell proliferation, gametogenesis and localization of the P-granule component PGL-1"Mechanisms of Development. 121・3. 213-224 (2004)