2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15029244
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中越 英樹 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (50314662)
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Keywords | ショウジョウバエ / 光受容細胞 / ロドプシン / 機能分化 / dve |
Research Abstract |
キイロショウジョウバエの複眼は約800個の個眼から構成され、その中には8種類の光受容細胞(R1-R8)が存在している。これらは受容する光波長の違いや形態的な特徴から次の2つに大別できる。(1)外側光受容細胞(R1-R6)はRhodopsin1(Rh1)を発現することで物体のイメージ形成に必要な波長の光を受容し、神経軸索を脳薄層(ラミナ;lamina)に投射する。(2)内側光受容細胞(R7,R8)は主に色覚情報を与えるとされ、yellow typeはRh4/Rh6(in R7/R8)、pale typeはRh3/Rh5(in R7/R8)を発現し、軸索を脳髄層(メダラ;medulla)に投射する。defective proventriculus(dve)遺伝子は、視覚認識行動異常の原因遺伝子として同定されたホメオドメイン転写因子である。まず、ショウジョウバエ視覚神経系発生の初期(3齢幼虫〜蛹初期)のラミナと、後期(蛹中期〜成虫)の複眼においてDveを発現する細胞を確認した。前者はラミナニューロンの前駆細胞由来でありながら神経細胞には分化せず、また既知のグリア細胞とも一致しないため、これらの細胞群をDPL(Dve-positive cells in lamina)と呼ぶことにした。蛹初期にDPLを除去した成虫個体では成虫ラミナニューロンの数が減少し、DPLが存在するラミナ表層においてBrdUの取り込み活性を蛹期に検出することができた。また、DPLはラディアルグリアと類似の突起を有し、細胞系譜追跡実験により、娘細胞がニューロンに分化している可能性を示唆する結果を得た。これらの結果から、DPLは神経前駆細胞の性格を保持し、新規ニューロンの産出によって蛹発生中にラミナ神経系を構築する神経幹細胞であるという可能性が示唆された。 複眼におけるdve遺伝子発現はR1-R7で検出されたが、dve変異複眼では外側光受容細胞に関する異常は確認できなかった。一方、内側光受容細胞では、全てのR7がRh3を、R8がRh6を発現していた。つまり、ロドプシン発現パターンの初期状態はRh3/Rh6(in R7/R8)であり、Dveを介した誘導シグナルによって内側光受容細胞の機能的分化が制御されていることが明らかとなった。
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