2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15029247
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古江 秀昌 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (20304884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 恵 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10140641)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / in vivoパッチ法 / シナプス / 行動学 / 慢性炎症 / 脳由来神経栄養因子 / 痛み |
Research Abstract |
行動実験、脊髄スライスおよびin vivoパッチクランプ法を組み合わせ、慢性炎症に伴い脊髄痛覚回路に如何なる可塑的変化が惹起されるか解析した。炎症モデル患側への機械的刺激に対する逃避行動の閾値は正常に比べ有意に低下し、それは炎症直後から一週間以上持続した。炎症初期の脊髄後角表層細胞からin vivoパッチクランプ記録を行い、興奮性シナプス後電流(EPSC)を記録すると、正常に比して振幅の大きな自発性EPSCが多くの細胞で観察された。皮膚へ触刺激を加えると正常で観察される触応答の順応がみられず、刺激の間持続してEPSCの振幅と発生頻度が増大した。機械的痛み刺激によって誘起されるEPSCの発生頻度も有意に高かった。この時期に脊髄スライス標本を作製し脳由来神経栄養因子(BDNF)を灌流投与すると、EPSCの発生頻度が著明に増大した。しかし、炎症後7日を経過したものや正常では、BDNFによる発生頻度の増大は観察されなかった。また、NGFなど他の栄養因子を与えてもEPSCの発生頻度に変化は見られなかった。脊髄後角表層へは正常では痛みを伝えるAδ線維とC線維の単シナプス性入力が観察されたが、炎症後一週間を経過すると、約30%以上の細胞で非侵害性情報を伝えるAβ線維からの単シナプス性EPSCが記録された。これは慢性炎症に伴って痛覚回路シナプス入力に可塑的変化が惹起されることを示唆する。 以上より、炎症初期には末梢の感作が起こり脊髄後角表層へ自発性あるいは皮膚刺激による応答増大など、脊髄への興奮性入力が著明に増大すること、また、BDNFは同時期にEPSCの発生頻度を増大させることが明らかになった。BDNFは活動依存的にC線維から放出されることが示唆されていることから、炎症初期の興奮性入力の増大に伴うBDNFの作用が、炎症後期に完成する痛覚回路の可塑的変化発現に重要な役割を果たす可能性が示された。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Kawasaki Y: "α2 adrenoceptor-mediated presynaptic inhibition of primary afferent glutamatergic transmission in rat substantia gelatinosa neurons."Anesthesiology. 98・3. 682-689 (2003)
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[Publications] Yang K: "Pre- and postsynaptic inhibition mediated by GABA_B receptors in rat ventrolateral periaqueductal gray neurons."Biochemical and Biophysical Research Communication. 302. 233-237 (2003)
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[Publications] Matsumoto N: "GABA-mediated inhibition of glutamate release during ischemia in substantia gelatinosa of the adult rat."Journal of Neurophysiology. 89. 257-264 (2003)
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[Publications] Jiang N: "Somatostatin directly inhibits substantia gelatinosa neurons in adult rat spinal dorsal horn in vitro."Neuroscience Research. 47. 97-107 (2003)
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[Publications] Yang K: "Alterations in primary afferent input to substantia gelatinosa of adult rat spinal cord after neonatal capsaicin treatment."Journal of Neuroscience Research. 74・6. 928-933 (2003)
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[Publications] 古江 秀昌: "およびラット脊髄後角細胞からのin vivoパッチクランプ記録法"日本生理学雑誌. 65・10. 315-321 (2003)
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[Publications] 土井 篤: "ラット大脳皮質体性感覚野からのin vivoパッチクランプ記録法"日本生理学雑誌. 65・10. 322-329 (2003)
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[Publications] 吉村 恵: "脊髄後角の可塑性と痛み"脳21. 6・1. 42-47 (2003)
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[Publications] Furue H: "Progress in Pain Research and Management Proceedings of the 10th World Congress of Pain"IASP Press. 959 (2003)