2003 Fiscal Year Annual Research Report
スピン平衡多核錯体の合成と多段階光スイッチング素子の構築
Project/Area Number |
15033210
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 化学系, 教授 (60176865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二瓶 雅之 筑波大学, 化学系, 助手 (00359572)
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Keywords | 光機能 / スピン平衡 / 鉄錯体 |
Research Abstract |
スピン平衡現象は熱のみならず光により(LIESST : Light Induced Excited Spin State Trapping)錯体分子のスピン状態(高スピン・低スピン状態)を動的に変化させ得る興味深い現象である。本研究は、スピン平衡錯体[Fe^<II>(dppH)_2](BF_4)_2(dpp=2,6-di(pyrazol-1-yl)pyridine)に機能性部位を導入することによる、多重安定性の創出を月的とした。本研究において新規に合成した[Fe^<II>(dppOH)_2](PF_6)_2 (1)は置換基として-CH_2OH基をもち、様々な機能性部位の導入が可能なことから本研究における化合物の前駆体となる。磁化率測定の結果、錯体1はTc=243Kを有するスピンクロスオーバー錯体であることがわかった。また、X線構造解析及び単結晶吸収スペクトル測定により低スピン及び高スピン状態の構造、電子状態をそれぞれ明らかにした。さらに、奨励研究費により購入した光照射システムを用い、5Kでの光照射によりLIESST挙動を確認した。以上より錯体1が、本研究における有用な前駆体であることを確認した。さらに、配位子dppOHを出発原料として酸化還元活性部位としてアントラセニル基を有する新規配位子dppAQ、及びテトラチアフルバレン部位を有するdppTTFを合成した。dppAQより得られる錯体[Fe^<II>(dppAQ)_2](BF_4)_2(2)はX線構造解析及び磁化率測定から室温では低スピン状態を示し、低スピン状態から高スピン状態への転移温度は400K以上である事がわかった。また電気化学測定から錯体2はアントラセン部位に由来する可逆な二段階一電子還元及び中心の鉄イオンに由来する可逆な酸化挙動を示した。今後は、機能性部位の導入及びdppTTFから得られる錯体によるスピン平衡と伝導性が共存する光応答性複合分子系の構築へと展開させる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] H.Oshio: "Mixed Valent Fe(II, III)Wheel with S=29/2 Ground State"Angew.Chem.. 42. 223-224 (2003)
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[Publications] H.Oshio: "Syntheses, Structures and Magnetic Properties of Multinuclear Manganese Complexes with Schiff Base Ligands"Inorg.Chem.Commun. 6. 377-380 (2003)
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[Publications] H.Oshio: "Multinuclear Nickel(II) Complexes with Schiff Base Ligands"Synth.Met.. 137. 1309-1310 (2003)
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[Publications] H.Oshio: "Structure and Magnetic Properties of Metal cubes"Polyhedron. 22. 2359-2362 (2003)
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[Publications] H.Oshio: "Structures and Magnetic Properties of Di- and Trinuclear Nickel (II) Complexes with Phenoxo and Acetato Bridges"Chem.Lett.. 32. 812-819 (2003)
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[Publications] H.Oshio: "Spectroelectrochemical Studies on Mixed Valence States in a Cyanide Bridged Molecular Square"Chem.Eur.J.. 9. 3946-3950 (2003)
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[Publications] 大塩 寛紀 (共著): "集積型金属錯体の科学:物質機能の多様性を求めて"化学同人. 270 (2003)