2004 Fiscal Year Annual Research Report
スピン平衡多核錯体の合成と多段階光スイッチング素子の構築
Project/Area Number |
15033210
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (60176865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二瓶 雅之 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (00359572)
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Keywords | 光機能金属錯体 / 多段階スピン平衡錯体 / シアン化物イオン架橋錯体 |
Research Abstract |
遷移金属錯体は多様な電子構造と立体構造から、磁性・伝導性・光物性等の様々な物性を示す。中でもスピン平衡現象は熱のみならず光により電子(スピン)状態を変化させることができ、光機能性分子素子として利用可能な系である。本研究においては、次の二点に焦点を絞り研究を行った。 1)多段階スピン平衡を示すイオン架橋環状四核錯体の合成 シアン化物イオン架橋環状四核錯体[Fe^<II>_4(μ-CN)_4(bpy)_4(L)_n]^<2+>を合成し、その物性を明らかにした。L=2,2'-ビピリジン(bpy)である[Fe^<II>_4(μ-CN)_4(bpy)_4(bpy)_4](PF_6)_4は、四つの鉄(II)イオンは低スピン状態を示す。そこで、柔軟な配位構造をとる四座配位子トリスピリジルメチルアミン(tpa)を導入した新規錯体[Fe^<II>_4(μ-CN)_4(bpy)_4(tpa)_2](PF_6)_4を合成し、この錯体が2段階のスピン転位を示すことを明らかにした。 2)多機能性スピン平衡錯体合成 導電性有機分子であるテトラチアフルバレン(TTF)をスピン平衡錯体に導入することにより、外場により伝導性が制御可能な伝導性スピン平衡錯体の構築を目指した。先に報告したスピンクロスオーバー錯体[Fe^<II>(dppOH)_2](PF_6)_2は置換基として-CH_2OH基を有し、様々な機能性部位の導入が可能である。本研究では、この三座配位子にTTF部位を導入した新規配位子dppTTFをもちい、[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_2を合成した。構造解析の結果、[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_2は分子内に二つの中性TTF部位を有し、中心の鉄(II)イオンは高スピン状態をもつ。また、アセトニトリル中で錯体[Fe^<II>(dppTTF)_2]^<2+>を酸化することにより、二つのTTFカチオンラジカル部位をもつ錯体[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_4を得た。[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_2では、分子間の弱いS…S相互作用により中性TTF部位がカラム構造を形成しているのに対し、酸化体[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_4はTTFラジカル部位が分子間で二量体を形成していることから絶縁体であると予想される。
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Research Products
(5 results)