2004 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解分光計測を利用した光触媒機構初期過程の解明
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15033219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
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Keywords | 酸化チタン / 光触媒 / 電荷担体 / 時間分解分光法 / 近赤外 / フェムト秒 / 微粒子 |
Research Abstract |
研究代表者らは,昨年度に引き続き,酸化チタン光触媒(TIO4)を光照射した際に生成するキャリアーの挙動を,フェムト秒時間分解近赤外分光法を用いて追跡した. 酸化チタン光触媒を光照射すると,160フェムト秒の減衰成分と,数百ピコ秒の減衰成分が観測される.両者の強度比をポンプ光強度を変えながら測定したところ、強度比は一定だった.これは,速い成分が1次反応で記述できるジェミネート対消滅のような減衰であり,他のキャリアーには影響されないことを示している.また,遅い成分に対応する減衰は,ポンプ光強度を変化させても全て共通の速度定数をもつ2次反応でよく記述できた.これは,この減衰が非ジェミネート的な電子-正孔消滅過程に対応することを示している. 酸化チタン光触媒に白金助触媒を担持すると触媒活性が増大することが知られている.研究代表者らは白金助触媒を担持した酸化チタン光触媒を光照射した場合と,白金助触媒を担持しない酸化チタン光触媒を光照射した場合の双方について光照射後の電荷担体の動的挙動を調べ,白金助触媒の果たす役割を明らかにすることを目指した.実験の結果,白金助触媒を担持すると光照射後2.3ピコ秒で電子が酸化チタンから白金に移動することを強く示唆する結果を得た.この結果は,電子が酸化チタンから白金に移動することによって電子-正孔対の消滅が妨害され,その結果電荷担体の寿命が長くなって触媒効率が向上することを示している. 近赤外領域の光を用いると,光散乱の大きな粉末試料に対しても透過法で分光測定を行える.このため,粉末の光触媒微粒子のフェムト秒領域での時間分解分光測定を実現できる.研究代表者らは,自ら開発したフェムト秒時間分解近赤外分光法を効果的に活用することによって,酸化チタン光触媒を光照射したときに生じるキャリアーの動力学の詳細を明らかにすることができた.
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Research Products
(2 results)