2003 Fiscal Year Annual Research Report
金属錯体を基本骨格とする光感応性ヘテロナノ構造体を用いた多重機能の探索
Project/Area Number |
15033243
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川田 知 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10211864)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海崎 純男 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20089874)
|
Keywords | 二次元金属錯体 / ベイポクロミズム / 水素結合 |
Research Abstract |
特異的な物性を持つ集積体を構築し、その層間に光感能性の高い機能性分子を導入することで、これをトリガーとして光、スピン、伝導電子相互作用した光誘起多重機能を発現する系の構築を目指した。そのために、以下の検討を行った。 (1)二次元遷移金属錯体集積体の構築:機能発現のステージとなる遷移金属錯体集積体を銅(II)とクロラニル酸、種々のアミン類(ゲスト)で合成した。ヘキシルアミン(ham)をゲストとした場合、クロラニル酸との濃度比を変化させてて合成することで二種の集積体が得られた。クロラニル酸の濃度比が高い場合に得られた集積体、{(Hham)2[Cu2(CA)3]・2EtOH}n(1)では、配位結合によりハニカム状に繋がれた[Cu2(CA)3]2-錯体層が作る空孔に、プロトン化したアミンとエタノールが包接されていた。一方、クロラニル酸の濃度比が低い場合に得られた集積体{(Hham)2[Cu(CA)2(EtOH)2]}n(2)では、[Cu(CA)2]2-単核錯体が水素結合で編み上げられた層間にプロトン化したアミンが包接されていた。 (2)ベイポクロミズムを有する集積体の構築:多彩なコンフォメーションを取りうるヒンジ様の配位子H2bhnを連結配位子とした集積体を合成した。エタノールと水を溶媒とし、中心金属に銅(II)イオンを用いたところ、一次元鎖状金属錯体を得た。この一次元鎖は、配位子のπ-πスタッキング相互作用とCH-O水素結合により重なり合い空孔を形成し、その空孔中には溶媒のエタノールと水が包接されている。この空孔中のエタノールは可逆的に吸脱着され、それに伴いグロミズムを示すことが明らかになった。さらに、この集積体を種々の溶媒蒸気に曝したところ、特定のアルコール類のみを吸着してクロミズムを示すことが明らかとなり、新しいセンサー材料としての発展が期待できる。そこでこのクロミズム現象の機構を解明するために、異なる色を呈する二つの亜鉛(II)金属錯体集積体の合成と構造解析を行い、これらを構成する一次元鎖の構造、特にbhnq2-の二つのナフトキノン環の二面角が異なり、その相違が挿入される溶媒分子と一次元鎖間の水素結合ネットワークの相違に起因していることを見出した。この二面角の違いが配位子内のπ系の広がりを制御し、色の違いをもたらしていると思われる。以上の変色機構は可逆的な溶媒吸脱着を示す鋼(II)系においても当てはまる。すなわち、溶媒吸脱着に伴い一次元鎖内の銅々間距離が変化することがESR、粉末X線回折より見いだされている。さらに、エタノールに対する等温吸脱着はヒステリシスを伴い、吸着挙動はタイプIV型に分類されることから、上記の構造変化を伴う動的な吸脱着機構が支持され、配位子の構造柔軟性と水素結合能が溶媒吸脱着を可能としていることが示唆される。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] H.Kumagai, S.Kawata et al.: "Reactions between Vanadium(III) and a Pyridylketone oxime Ligand and Structures of Reaction Products"Coord.Chem.Rev.. 237. 197-203 (2003)
-
[Publications] H.Kumagai, S.Kawata et al.: "Hydrothermal synthesis, crystal structure and characterization of a new hexanuclear cobalt(II) complex comprised of octahedral and tetrahedral cobalt ions"Polyhedron. 22. 1917-1920 (2003)
-
[Publications] M.K.Kabir, S.Kawata et al.: "Crystal Engineering Using the Versatility of 2,5-Dichloro-3,6-dihydroxy-1,4-benzoquinone with Organic and Metal Complex Partner"Cryst.Growth Des.. 3. 791-798 (2003)
-
[Publications] K.Yamada, S.Kawata et al.: "Metal-Complex Assemblies Constructed from a Flexible Hinge-Like Ligan H2bhnq. Structural Versatility and Dynamic Behavior in the Solid State"Chem.Eur.J. (in press). (2004)
-
[Publications] M.Kawahara, S.Kawata et al.: "Module-Based Assembly of Copper(II)-chloranilate Compounds : Syntheses, Crystal Structures and Magnetic Properties of {[Cu2(CA)(terpy)2][Cu(CA)2]} and {[Cu2(CA)(terpy)2(dmso)2][Cu(CA)2(dmso)2]-(EtOH)}(H2CA=chloranilic acid, terpy=2,2':6',2''-terpyridine, dmso=dimethylsulfoxide)"Inorg.Chem.. 43. 92-100 (2004)
-
[Publications] 川田 知: "金属錯体をビルディングブロックとする水素結合により集積されたケモセンサーの構築"機能材料. (印刷中). (2004)