2003 Fiscal Year Annual Research Report
高度にフラクショナルなボランシグマ錯体の動的挙動と反応性に関する研究
Project/Area Number |
15036215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 泰朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10262099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下井 守 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30092240)
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Keywords | ボラン / 錯体 / ホウ素 / 動的挙動 / 触媒 |
Research Abstract |
本研究ではボランシグマ錯体の広い意味での動的挙動について,実験・理論の両面からアプローチすることを試みた. (1)ボランシグマ錯体の溶液内動的挙動 ボランシグマ錯体のボラン配位子は,金属に配位した水素とホウ素上の末端水素とが,その位置を交換するフラクショナルな挙動を示す.この挙動の機構をDFT計算によって検討した.その結果,[Cr(CO)_5(η^1-BH_3・EMe_3)](E=N, P)のBH交換における遷移状態は,金属中心とη^2型で相互作用したボランを含んでいることが明らかになった.また計算により求めたこの過程の活性化エネルギーは,実験的に求めたそれと比較的良い一致を示した. (2)ボランシグマ錯体を中間体とする,第2級アミン-ボラン付加物の脱水素反応 様々な置換基を有する第2級アミンボランと触媒量の[M(CO)_6](M=Cr, W)を用いて同様の反応を試みたところ,全ての場合に脱水素反応が触媒的に,かつ高収率で進行し,アミノボランが生成した.また比較的小さい置換基を持つアミンボランでは,環状のアミノボラン二量体を高収率で与えたのに対し,置検基の大きなアミンボランでは,単量体BH_2=NR_2が主生成物となり,また反応が大幅に遅くなった.なお反応途中に,反応中間体と思われるボラン錯体が観測された.この中間体の構造はDFT計算により求めた. 重水素ラベリング実験とDFT計算によって第2級アミンボランの脱水素の機構を検討したところ,置換基の小さなアミンボランの脱水素は分子間反応で進行し,一方で,置換基の大きなアミンボランの脱水素においては,反応は分子内過程で進行することを示唆する結果を得ると共に,その反応に前述のボラン配位子の動的挙動が大きな役割を果たしていることを明らかにした.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Kawano, T.Yasue, M.Shimoi: "Boryl Complexes and Cationic Borane σ Complexes of Manganese Heterolytic Cleavage of the Metal-coordinated BH σ Bond"Boron Chemistry at the Beginning of the 21th Century. 234-238 (2003)
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[Publications] L.N.Pangan, M.Shimoi, H.Kawakami, Y.Kawano: "Reactivity of the Cluster Core of Ruthenaboranes toward Phosphorus Compounds"Boron Chemistry at the Beginning of the 21th Century. 266-270 (2003)