2003 Fiscal Year Annual Research Report
配位原子への水素結合のオンオフによる錯体構造と中心金属電子状態の動的制御の研究
Project/Area Number |
15036239
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 仁 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20222383)
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Keywords | 水素結合 / 動的構造変化 / pKa / カルボン酸 / カドミウム錯体 |
Research Abstract |
本研究では水素結合の形成・開裂により配位原子の求核性を変化できる配位子を新奇な反応場として構築し、金属-配位原子結合に及ぼす影響と、それによって引き起こされる金属の電子状態の動的な変化を系統的に探索することを目的として、スイッチング能を有する配位子であるケンプ酸ビスアミド化合物について検討を加えた。 ケンプ酸ビスアミド誘導体のカルボン酸1、アニオン2を合成し、各種分光分析、質量分析、X線構造解析により同定した。^1H-NMR測定の結果、アニオン状態でアミド水素は強い水素結合を形成していることを明らかにした。1,2の構造を明らかにするためにX線結晶解析を行なった結果、カルボン酸1では一つのアミド基がカルボキシル基と水素結合を形成し、アニオン2では両方のアミド基がカルボキシル基に対して水素結合を形成している。アニオン2において、二つの水素結合を形成するために、シクロヘキサン骨格が歪み、舟形構造をとっていることが判明した。この構造はNOESYスペクトルの解析から、溶液状態においても保持されており、水素結合の形成によるアニオンの安定化効果が、シクロヘキサン骨格の椅子型から舟型への骨格変化のエネルギーに勝っており、水素結合様式とコンフォメーション変化が連動した動的な配位子の構築に成功した。また、本配位子とガドミウム、ナトリウム等との錯体を合成し、X線構造解析を行なった結果、金属-カルボキシル結合の共有結合性と水素結合強度には強い相関があり、結合のイオン結合性が上昇するにつれ水素結合が強くなり、それに伴いシクロヘキサン骨格も連動して変化することを明らかにした。
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