2003 Fiscal Year Annual Research Report
X線吸収スペクトルによるブラックホール降着ガスの研究
Project/Area Number |
15037206
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
政井 邦昭 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (80181626)
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / 天文 |
Research Abstract |
原子準位を取り入れた輻射輸送の研究を進め,輻射と物質の熱的カップリングが弱く散乱が支配的な場合のcurve of growthについて定量的理論計算を行った.原子番号が大きな元素のK吸収線など,X線領域のとくにE1遷移線は自発的放射遷移確率(EinsteinのA係数)が極めて大きい.したがって,光子吸収による励起状態が安定化する過程において,自発的放射と競争過程となる衝突脱励起が働くには固体密度に近い高い密度が必要になる,これに比べブラックホール降着ガスの密度ははるかに低く,このことは,鉄などの吸収線形成過程において輻射と物質(ガス)の熱的カップリングが極めて弱いことを意味し,線スペクトルの輸送において吸収(光子が壊され熱化される)よりも散乱が支配的になることを示唆している.言い換えれば,X線域の吸収線に対しては,局所的熱平衡(LTE)の暗黙の仮定に基づいた古典的なcurves of growthは物理的根拠を失うことになる,そこで,原子準位と直接的にカップルした輻射輸送方程式を導き,局所熱平衡の仮定を必要としない(non-LTE)定式化を行った.この方程式が,LTEの極限では古典的なcurveを矛盾なく与えることを示すとともに,光学的に薄い場合には吸収線でなく輝線が生じること,また光学的に厚い極限では黒体放射になり線スペクトルが消失することなどを,自然に説明できることを示した.さらに,ブラックホール連星で予想される輻射場,降着ガスの温度・密度などを評価し,輻射輸送方程式を解いて酸素および鉄のH-like共鳴線のcurves of growthの理論計算を示した.これらの結果をまとめた論文を米国学会誌(宇宙物理学)に投稿し,既に受理されている.
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Research Products
(1 results)