Research Abstract |
今年度は,カールフィッシャー滴定装置と,加熱脱水装置を購入し,火砕物の含水量と岩石組織の観察をおこなった.減圧実験については水熱合成装置の温度・圧力較正中をおこなったが,実際の実験については,最近海外の研究機関から複数の減圧実験結果がでておりそれらを検討の上来年度実施の予定である.火砕物についてはできるだけ多様な噴火規模のものを採取し,測定をおこなった.噴出物としては,姶良火砕噴火(VEI=7,以下同じ),支笏Spfa, Spf1 (7),十和田八戸Twfa, Twrfl (6),池田Ikfa (5),樽前Ta-b (5),駒ヶ岳Ko-a (4),桜島1914,Sz-1 (4),有珠1977,Usu (3)を用いた.粒径8-16mmの軽石について,一部を含水量測定に,一部を岩石組織観察に用いた.段階加熱により代表的試料の脱水挙動を検討した.最も新しい試料でも古いもの(水和の可能性がある)でも昇温に対する脱水挙動はほぼ同じであった.含水量は,噴火規模の大きなもの(Spfa, Twfl, Twfa, Ik)では1.8-2.6wt%であるのに対し,規模の小さなもの(Tab, Koa, Szl, Usu1977)では,0.4-0.8wt%と低い.ただ,規模の大きな噴火は6500年よりも古く,小規模なものは335年よりも新しく,水和の違いを見ている可能性がある.これまでのガラス中の水の拡散係数を検討すると,約1000年より若ければ平均拡散距離は0.1μ以下で水和は無視できるが,より古いものについては慎重な検討が必要であることが判明した.火砕物の発泡組織についてはガラスの壁の厚さを計測した.より規模の大きな噴火でガラスの壁の厚さが大きい傾向がでた.結晶度はより規模の小さな噴火で大きく,大規模なものでは微晶は含まれない.このほかにガラス中の塩素の濃度勾配の有無を検討したが,一部で若干周縁で下がる傾向のものがあったが,全体としては殆ど検出不能な程度であり,塩素の濃度勾配は存在しない可能性が高い.
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