Research Abstract |
本年度は,マグマの発泡過程の中でも特に大規模火砕流噴火で生じる軽石と火由灰の気泡数密度の違いについて注目した研究をおこなった.これは,以前から定性的に記述されてきたことであるが、同じ噴火で生じる軽石と火山灰とでは気泡壁厚さが異なる点について,より定量的な取り扱いを世界で初めておこなった.気泡壁厚さから気泡数密度を見積もる手法として,気泡セルモデル(Proussevitch et al.1993)を用いた.これにより,発泡度(p)一定では気泡数密度(Nv)は気泡壁厚さ(d)の関数として,Nv=6(1-p^<1/3>)^3/[pai(1-p)d^3]とあらわされる.実際には2次元の気泡壁片の断面の厚さを計測してその分布を求め,それについてランダムな切片であることの補正をおこなった分布頻度を求め,それに上式を適用して各厚さクラスのNvを求めそれを合計して気泡数密度を求あることをおこなった.この気泡セルモデルの適用については,従来の方法の結果との較正をおこない,誤差範囲(約30%:300厚さ計測時)で一致することが明らかになった.次に,支笏カルデラSpf1火砕流試料をふるい分けし,それぞれの粒度について,気泡壁厚さを計測し,気泡数密度を求めたが,1-3φの火出灰の気泡数密度が小さく10^<13>m^<-3>程度であり,一方-1〜-3φの軽石については10^<15>m^<-3>程度でありより気泡数密度解大きいことが示された.気泡数密度はマグマの減圧速度の3/2乗に比例することが理論的にも.実験的にも近年示されており,今回の測定結果は,同じ噴火で生じた火砕物で主体を占める火山灰はより減圧速度の小さな条件で生じたもので,軽石はより大きな減圧速度で生じた,ということになる.従来,軽石と火山灰の生成条件の違いは特に考慮されず,軽石についての発泡組織の検討のみがおこなわれてきたが,今回の研究で,噴火産物の大半を占める火出灰の発泡組織の検討が重要であることが示された.今年度はさらに,姶良火砕噴火について,大隈降下火砕物,入戸火砕流堆積物,AT火出灰の3試料について,同様に粒度ごとの気泡壁厚さの計測をおこない。支笏と同様,より細粒の火山灰が小さな気泡数密度を示すことが明らかになった.
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