2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分裂を制御するコンドロイチン機能調節機構の解明
Project/Area Number |
15040217
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 一也 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (30150395)
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Keywords | 線虫 / RNAi / TMP / UV / コンドロイチン / プロテオグリカン / グリコサミノグリカン / 細胞分裂 / 細胞質分裂 |
Research Abstract |
多細胞生物において今まで全く機能が不明であったコンドロイチンプロテオグリカンが、細胞分裂に必須であることを世界ではじめて明らかにした。本研究ではモデル生物である線虫Caenorhabditis elegansを用い、ヒトのコンドロイチン合成酵素ChSyの遺伝子の線虫オーソログの機能をRNA干渉法と欠失突然変異体の解析で研究した。胚発生への影響はタイムラプス全自動微分干渉蛍光顕微鏡(四次元顕微鏡)をもちいて単一細胞レベルでの胚発生を追跡することで追跡して解析した。この結果、コンドロイチンの量が減少した胚では、細胞分裂に異常が生じ、細胞分裂が見かけ上、逆行する現象がしばしば観察された。さらにコンドロイチンが完全に欠失した胚では、細胞分裂(核の分裂と細胞質の分裂からなる)における、細胞質分裂の完全な喪失と異常な染色体分配を伴う核分裂を確認した。これはコンドロイチンが正常な細胞質分裂に不可欠であり、また核分裂にも必須であることを示している。従来、Auroraキナーゼをはじめとして細胞内で細胞分裂を制御する様々な因子が発見されていたが、細胞表面の分子についてはほとんど未知であった。本研究によって、細胞表面に存在している糖鎖が細胞分裂に関与していることがはじめて明らかになり、細胞分裂制御ネットワークの解明で全く未知であった細胞表面の役割にはじめて光があてられた。本研究の成果は、糖鎖生物学に新しい一章を書き加えた(Nature Cell Biol.誌)などの高い評価を受けている。さらに同様の細胞分裂に対する影響を与える関連遺伝子についても明らかにしており、コンドロイチン合成酵素や関連蛋白質について、GFP蛍光蛋白質などとの融合蛋白質を導入したトランスジェニック線虫による遺伝子の発現解析も終えている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Mizuguchi, S.: "Chondroitin proteoglycans are involved in cell division of Caenorhabditis elegans"Nature. 423・6938. 443-448 (2003)
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[Publications] Sugahara, K.: "Recent advances in the structural biology of chondroitinsulfate and dermatan sulfate"Current Opinion in Structural Biology. 13・5. 612-620 (2003)
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[Publications] Hirabayashi, Y.: "The acetyl-CoA transporter family SLC33"Pflugers Arch - European Journal of Physiology. 447・5. 760-762 (2004)
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[Publications] 水口 惣平: "線虫の細胞分裂を制御する糖鎖コンドロイチン"蛋白質 核酸 酵素. 49・2. 141-147 (2004)
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[Publications] 野村一也: "線虫で糖鎖の機能を探る"医学のあゆみ. 207・5. 307-313 (2003)
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[Publications] 野村一也: "糖鎖を介した細胞分裂・細胞分化制御工学の展開"化学工業. 54・10. 46-52 (2003)
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[Publications] 野村一也: "線虫を用いた糖鎖機能の網羅的解析のすすめ"蛋白質 核酸 酵素 別冊. 48・8. 1057-1063 (2003)