2004 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖異常に基づく遺伝性筋症の分子病態解明:縁取り空胞型遠位ミオパチーを中心として
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15040227
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
桜庭 均 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 参事研究員 (60114493)
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Keywords | 糖鎖 / 縁取り空胞型遠位ミオパチー / シアル酸 / レクチン / 遺伝性筋症 / 糖タンパク質 |
Research Abstract |
縁取り空胞型遠位ミオパチー(Distal Myopathy with Rimmed Vacuoles, DMRV)は日本人に多くの患者が存在し、近年その責任遺伝子がUDP-GlcNAc2-epimerase/ManNAc kinaseをコードするGNE遺伝子であることが明らかとなった。この酵素は、CMP-シアル酸生合成系の重要な酵素であることから、DMRV患者ではシアル酸代謝に異常を来たす可能性があるが、詳しい病態は不明である。そこで、DMRV患者由来の生検筋組織をPNAレクチンで染色すると、筋形質膜の染色性の増強が認められた。次に、PNAレクチンで染色される糖鎖の局在を調べるために、PNAレクチンと筋細胞膜のマーカータンパク質であるジストロフィンに対する抗体との2重染色を行ったところ、DMRV患者由来の筋組織ではPNAレクチンの染色パターンがジストロフィンの染色パターンと一致した。これらの分析結果は、DMRV患者由来の筋組織では、特異的にPNAレクチンで認識されるコア1糖鎖が筋細胞膜上で増加していることを示唆している。一方、対照筋組織のシアル酸をシアリダーゼ処理により除去した後、PNAレクチン染色を行うと、PNAレクチンで強く染色されるのが観察された。これらの分析結果から、対照筋組織の筋細胞膜上の糖鎖は、コア1糖鎖の非還元末端にシアル酸が付加されているのに対して、DMRV患者由来の筋組織の筋細胞膜上の糖鎖では、シアル酸の付加に異常があることが示唆された。対照及びDMRV患者の骨格筋組織の糖タンパク質について、シアル酸の量を緩和酸水解-蛍光HPCL分析法で測定したが、両者の総シアル酸量に大きな差は見られなかった。次に、対照及びDMRV患者の筋組織をN-glycosidase F(PNGase)処理し、N-型糖鎖を遊離させた後に、シアル酸の定量を行ったところ、DMRV筋組織では、対照と比べて30%〜40%程度の減少がみられた。これらの分析結果から、DMRVでは、本酵素の異常により、特にO-型糖鎖の非還元末端のシアル酸の量が減少すると考えられた。
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Research Products
(6 results)