2004 Fiscal Year Annual Research Report
充填スクッテルダイト化合物の超音波物性と電子格子相互作用の研究
Project/Area Number |
15072202
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
吉澤 正人 岩手大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30220619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 輝孝 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60134053)
根本 祐一 新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10303174)
松川 倫明 岩手大学, 工学部, 助教授 (40221585)
中西 良樹 岩手大学, 大学院・工学研究科, 助手 (70322964)
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Keywords | 強相関電子系 / 磁性 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 / 物性実験 |
Research Abstract |
今年度は^3Heクライオスタットおよび希釈冷凍機の立ち上げを行い、室温から20mKまで弾性定数および超音波吸収の測定が可能となった。これらの装置を用いて充填スクッテルダイト化合物CeOs_4Sb_<12>およびSmRu_4P_<12>の測定を行った。SmRu_4P_<12>において希釈冷原機温度領域で新たな弾性軟化を発見した。この異常は結晶場効果では説明できず、この系の基底状態を探る鍵と考えている。この系の16Kと14Kの逐次相転移の起源として、弾性異常を詳細に検討から八重極転移の可能性を提言した。CeOs_4Sb_<12>にも特徴的な弾性定数のソフト化が観測された。低温で伝導電子と4f電子との混成効果にともない重い有効質量をもつ準粒子がフェルミ準位近傍に形成され、さらに数K以下でこの混成に伴うエネルギーギャップがフェルミ準位近傍に形成され半導体的な振舞を示すと解釈された。 さらに、Pr化合物で初めて発見された重い電子系であるPrFe_4P_<12>について、Prイオンの結晶場基底状態に関する知見を得るために、PrサイトをLaで5%および15%置換した系の弾性定数の測定を行った。(C_<11>-C_<12>)/2およびC_<44>は5K付近において極小値を示し、更に低温で特徴的な弾性ソフト化が観測された。このようなソフト化は最近提案されているPrイオンのΓ_1-Γ_4^<(2)>擬四重項モデルで全ては説明が出来ない。その原因として、La希釈に伴い強磁性転移の出現し、このソフト化は強磁性転移にともなうものではないかと考察している。 今年度は極低温で形成される重い準粒子が引き起こす弾性異常に関する研究およびフェルミ面の不安定性に伴うエントロピー放出の大変小さい強磁性転移に起因した弾性異常に関する研究を行った。 重い電子超伝導体PrOs_4Sb_<12>の超音波による弾性定数の温度・磁場依存性の精密測定を行ない、横波弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2の低温での磁場依存性に8T近傍で極小が現れることを見いだし、4f結晶場状態のがΓ_1-Γ_4であることを確定した。さらに、横波超音波に対応する弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2と(C_<11>-C_<12>)/2を成分に含む縦波超音波モードに超音波分散を見いだし、12個のSb原子で取り囲まれた性20面体カゴ中のPrイオンがオフセンター振動のラットリングをしていることを指摘した。オフセンター振動の基底状態は2重縮退したEg対称性の電荷揺らぎを伴っており、伝導電子と結合する。そのポーラロン効果がPrOs_4Sb_<12>の重い電子を形成し、超伝導を発現させていると考えられる。さらに、カゴ状化合物R_3Pd_<20>Ge_6(R=La,Ce,Pr,Nd)においても横波超音波の弾性定数C_<44>の分散見いだし、12個のPdと6個のGeによって構成されたカゴ中のオフセンター振動のラットリングをしていることを示した。カゴ状化合物のオフセンター振動は伝導電子と強く結合し、重い電子、超伝導、近藤効果などが期待され、強相関電子系の重要な課題となりつつある。
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Research Products
(17 results)