2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073201
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷川 達生 独立行政法人産業技術総合研究所, 強相関電子技術研究センター, チーム長 (00242016)
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Keywords | 有機半導体 / 電界効果トランジスタ / 強相関電子系 / モット絶縁体 / 電荷移動錯体 / 両極性効果 / 半導体界面 |
Research Abstract |
本年度は,有機半導体結晶をチャネル材料として用いる電界効果トランジスタ(FET)の作製プロセス技術を開発した.これを用いて,強相関効果によってパイ電子の電子運動が凍結した状態にある有機モット絶縁体・(BEDT-TTF)(F_2TCNQ)単結晶による有機モットトランジスタを作製し,低温で電界効果動作の実験を行った.実験の結果,得られた有機モットトランジスタが,2K〜60Kの温度範囲で,通常のFETには見られない両極性の電界効果動作を示すことを見いだした.観測された両極性電界効果動作を詳細に議論するため,三端子FET素子構造の対称性を考慮した対称ゲート操作を提案し,これを記述する両極性FETモデルによって,得られた電界効果動作の動作特性が解析できることを示した.p型,n型の両極性動作が低温2Kまで保持される理由は,電流端子を形成する金属-モット絶縁体界面において,電子と正孔の両キャリヤがモット絶縁体内にほぼ等しく注入されることに由来する.特に,p型,n型両動作は,温度の低下とともに,それぞれに対する電流-電圧特性の非線形性をほぼ同様に強めることが明らかになり,モット絶縁体-金属間界面の電子と正孔の注入に対し,非常に似通った界面障壁ポテンシャルが存在することが示唆された.また正孔の易動度は,温度に依らず電子の易動度の約1.5倍であり,得られた電界効果易動度はかなり低いにも関わらず,10Kから60Kの範囲で温度の減少とともに増加する金属的挙動,すなわちコヒーレントなバンド伝導が示唆される実験事実が得られた.以上の結果から,バンド絶縁体とは明らかに異質な,モット絶縁体の特異な界面キャリヤ伝導機構の一端を実験的に明らかにすることができた.今後,いくつかの典型的な有機モット絶縁体を用いて詳しい電界効果動作の実験を行い,その特異な伝導機構の全貌を明らかにしていく予定である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Hasegawa, K.Mattenberger, J.Takeya, B.Batlogg: "Ambipolar Field-Effect Carrier Injections in Organic Mott Insulators"Physical Review B. (発表予定).
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[Publications] 長谷川 達生: "有機モット絶縁体におけるFET効果"固体物理. 39. 153-162 (2004)