2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿野田 一司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20194946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90302760)
藤山 茂樹 東京大学, 大学院・工学系研究科, 研究拠点形成特認講師 (00342634)
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Keywords | 分子性固体 / 強相関電子系 / 物性実験 / 高圧力 / 磁気共鳴 |
Research Abstract |
(1)三角格子における量子スピン液体から超伝導への転移 ほぼ等方的な三角格子をもつ有機モット絶縁体κ-(ET)_2Cu_2(CN)_3の加圧下で現れる超伝導状態を探るべく単結晶^<13>C NMR実験を行った。その結果、(i)核スピン-格子緩和率1/T_1は超伝導転移直下でいわゆるコヒーレンスピークを示さずT^3で温度変化すること、(ii)ナイトシフトの変化が極めて小さいことがわかった。この結果は、電子対の軌道対称性がk-空間で線状のゼロギャップを与えるようなものである一方、スピン状態がトリプレットである可能性を残すものである。 (2)中性-イオン性転移の揺らぎ DMTTF-QBr_nCl_<4-n>(n=0-4)は,分子間の電荷移動(中性-イオン性(NI)転移)をともなった格子の変位により分極を示す物質群である.NI相転移点が絶対零度近傍にあり量子常誘電体と目されているDMTTF-2,6-QBr_2Cl_2の低温における揺らぎを明らかにするために,Br NQR測定を行った。その結果、DMTTF-QBr_nCl_<4-n>(n=0,2,4)のスピン-格子緩和率1/T_1は,約100K以下の低温でDMTTF-QBr_4の値より大きな値を示し,フォノンの熱揺らぎ(∝T^7)では説明できない揺らぎが1.7Kでも残存していることが明らかとなった。 (3)単一成分分子性導体の磁気転移の加圧効果 単一成分分子性導体として注目されている[Au(tmdt)_2]は、常圧下で110Kという高い温度で反強磁性転移が起こることが示唆されている。このメカニズムについては、第一原理バンド計算がなされていて、ネスティングしやすい平らなフェルミ面が予言されている。我々は、圧力依存性の実験からも磁気転移の機構を探るべく、加圧下で1H NMR実験を行った。その結果、8kbarでは小さいながら、明確な転移温度の降下が観測された。これは、転移のネスティング機構と矛盾しない。さらに高圧領域での実験を進めている。
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Research Products
(6 results)