2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 昭子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50011705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 絵美子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (30361562)
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Keywords | 分子性伝導体 / 中性単一分子性金属 / ジチオレン錯体 / 反強磁性相転移 |
Research Abstract |
[Au(tmdt)_2]の反強磁性相転移の詳細を検討するため、合成法を改良した。塩基として^nBu_4N・OH、金属源として^nBu_4N・AuCl_4を用いることにより、生成した(^nBu_4N)[Au(tmdt)_2]が分解せず、溶解性が上がり、THFを用いた再結晶が可能となった。再結晶後の(^nBu_4N)[Au(tmdt)_2]の電解酸化により、[Au(tmdt)_2]の小さな単結晶と格段に純度の高い黒色微結晶が得られた。30μmの単結晶のX線構造解析の結果、[Au(tmdt)_2]のAu原子は温度因子が大きく、分子面に対して垂直な方向への大きな熱的振動又は分子面からのずれの可能性が示唆された。高純度の[Au(tmdt)_2]の加圧成形試料の室温伝導度は50S・cm^<-1>で以前の報告の3倍程度の値を示した。2-300Kで様々な磁場(3,5,10,20,30,40,50kOe)下での[Au(tmdt)_2]の多結晶試料の静磁化率の温度依存性を調べた。室温静磁化率は4.2×10^<-4>emu・mol^<-1>で、高温部でほぼ一定で、150K付近から次第に減少し、110K付近で急激な減少を示した。110K以下の静磁化率は5kOe以下および40kOe以上では磁場に依存せず、23kOe付近をスピンフロップ磁場とする反強磁性相転移であることが示唆された。40kOe以上での50-100Kの静磁化率は3.6×10^<-4>emu・mol^<-1>で、高温部と低温部の値から相転移後もFermi面が15%程度残っていることが推測された。^1H NMRでも反強磁性相転移を示すスピン格子緩和率のピークと、二次モーメントの急激な立ち上がりが観測された。試料の質の向上により、[Au(tmdt)_2]の伝導性が上がり、110Kという有機物では例のない高い反強磁性相転移温度が観測された。この[Au(tmdt)_2]は伝導性と磁性を一つの分子が担う初めての分子性金属であることがわかった。
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Research Products
(14 results)