2003 Fiscal Year Annual Research Report
テトラチアペンタレン系導体における結晶構造・物性制御と超伝導化
Project/Area Number |
15073216
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
御崎 洋二 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90202340)
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Keywords | テトラチアペンタレン / テトラチアフルバレン / ドナー / 有機伝導体 / サイクリックボルタンメトリー / 電気伝導度 |
Research Abstract |
本研究では,二次元金属を容易に与えるπ電子骨格として,本研究者らにより開発されたテトラチアペンタレン(TTP)系ドナーに着目し,TTP分子に様々な化学修飾を施すことにより新しい有機超伝導体を構築することを目的としている。本年度に得られた成果は以下のとおりである。 (1)(チオ)ピラン環を含むTTPドナーを用いた伝導性錯体における分子構造-分子配列相関を解明するために,セレノメチル基を有する新規誘導体SE-(T)PDTの合成を行い,それらを用いた陽イオンラジカル塩の作製を行った。得られた塩のうち,(SE-TPDT)SbF_6(PhCl)_<0.5>のX線構造解析を行ったところ,積層方向のみに伝導性を示す一次元バンド絶縁体であることが示唆された。これまでに得られているSE-TPDT塩はいずれも室温で10^<-3> Scm^<-1>程度の伝導性を示す半導体であった。 (2)TTFとTTFから成るハイブリッドダイマー分子(1)の一連の誘導体の合成に成功した。1のCV測定を行ったところ,非対称な置換基を持つ誘導体は6対の酸化還元波を示すのに対し,対称な置換基を持つ誘導体では2電子移動過程が観測された。RHF/6-31G^*による分子軌道計算によると,HOMOとHOMO-1のエネルギー差は0.027eVと非常に小さく,HOMO-1も伝導性錯体におけるFermi準位に寄与することが期待される。TTF, TTPの両末端が無置換となっている1AaはTCNQやTCNQF_4と高伝導性(σ_<rt>=10^<-1>Scm^<-1>)のCT錯体を形成する。一方,1AaとnBu_4NI_3との反応ではI_3塩が単結晶として得られ,σ_<rt>=20 Scm^<-1>と高い伝導性を示す事が明らかとなった。 上記の結果をまとめた論文については投稿準備中である。
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