Research Abstract |
BTM-TTPは(BTM-TTP)_2X(X=PF_6, SbF_6, TaF_6)の組成を有する針状晶と板状晶を与えた。針状晶はいずれもβ型配列をとることが明らかとなった。これらに対し,板状晶はθ型配列をとり,ドナー分子がユニフォームに積層した構造をしていた。強結合近似法を用いたバンド計算によると,β型塩は擬一次元的な開いたフェルミ面を,θ型塩は閉じた二次元的なフェルミ面を有することが示唆された。電気伝導度測定を行ったところ,β型塩は室温で30-120 S cm^<-1>の伝導性を有し,5Kまで金属的な温度依存性を示した。 TTF骨格とBDT-TTP骨格それぞれの架橋側に置換基がついたダイマーは,立体障害が大きく結晶化が困難であった。そこで,両方の骨格それぞれの架橋側に置換基を持たないダイマーを合成し,それらの性質について検討した。ベンゾニトリル中,ダイマーの酸化還元電位をCV法により測定を行ったところ,いずれの誘導体も六対の一電子酸化還元波を示した。そのダイマーの室温における伝導度はTCNQ錯体は3.4 Scm^<-1>,I_3-塩は3.6 Scm^<-1>と高い伝導性を示した。 BDT-TTP骨格中の硫黄原子をセレンに置き換えることは,これらを伝導成分とした分子性導体のバンド巾を中チューニングし,電気物性を制御する上で重要であるが,合成の困難さから含セレンBDT-TTPの合成例は少ない。TSFとTTFから成る融合型ドナー並びにその類縁体の合成について成功した。これらのドナーを用いた分子性錯体の導電性について検討したところ,I_3塩ならびにTCNQ錯体が加圧成型試料にもかかわらず高い伝導性(σ_<rt>=8-36 S cm^<-1>)を示した。
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