2003 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境下の分子性導体における集団的な電荷ダイナミクスの理論
Project/Area Number |
15073224
|
Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
米満 賢治 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (60270823)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸根 順一郎 九州工業大学, 工学部, 助教授 (80290906)
|
Keywords | 交互積層型電荷移動錯体 / 中性イオン性相転移 / 光誘起相転移 / 時間依存量子発展方程式 / 多重臨界点 / 電歪効果 / パイエルス・ハバード / ブルーム・エメリー・グリフィス |
Research Abstract |
電荷移動錯体TTF-CAは光照射によりイオン性相から中性相に、またその逆に転移させることができることが知られており、前者では閾値挙動や巨視的振動が観測されている。1次元拡張パイエルス・ハバードモデルを平均場近似し、電子の波動関数について時間依存シュレディンガー方程式、格子変位について古典的運動方程式を解いて、電荷と格子の結合したダイナミクスを調べてきた。ここではパルスをより現実的に扱うために、振動電場をトランスファー積分のパイエルス位相として取り入れ、パルス電場の振動数、振幅、時間幅を独立に変えて計算を行った。 二量化したイオン性相を光照射した場合、吸収される光子数に比例すると考えられるエネルギー増加の関数として電荷移動量をプロットすると、閾値挙動が現れ、パルス電場の振幅や時間幅などにあまり依存しないことがわかった。相転移は中性ドメインの核形成とドミノ倒し的な広がりによつて起こる。パルス電場を強く短くすると二量化の消失と電荷移動が同じ時間スケールで起こるが、弱く長くすると電荷移動する前にイオン性相の分極が乱れてしまい、平均的に反転対称性が回復し常誘電イオン性相ができた後で中性相に転移することがわかった。 分子がほぼ等間隔に並んだ中性相を光照射した場合、吸収された光子数の関数として電荷移動量をプロットすると広い範囲で線型である。つまり協調性が見られず、注入されたエネルギーに比例して電荷移動が起こっただけであった。これは最新の実験結果と矛盾しない。その比例定数はパルス電場の振幅や時間幅にほぼ独立で、単純な平均場計算では入らないスピン揺らぎを考慮しても変わらない。相転移はゆるやかに起こり、ドミノ倒しとは異なって相境界がはっきりせず、急に広がることもない。光照射をとめると電荷移動量は変化しないので相転移の途中で電場を切ると中間的な相が現れ持続する。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] K.Yonemitsu, N.Miyashita: "Coherence Recovery and Photoinduced Phase Transitions in One-Dimensional Halogen-Bridged Binuclear Platinum Complexes"Physical Review B. 68. 075113 (2003)
-
[Publications] N.Miyashita, M.Kuwabara, K.Yonemitsu: "Electronic and Lattice Dynamics in the Photoinduced Ionic-to Neutral Phase Transition in a One-Dimensional Extended Peierls-Hubbard Model"Journal of the Physical Society of Japan. 72. 2282-2290 (2003)
-
[Publications] M.Kuwabara, K.Yonemitsu, H.Ohta: "Self-Doping Effect on the Mott Transition Accompanied with Three-Fold Charge Ordering in (DCNQI)2Cu"Synthetic Metals. 133-134. 295-297 (2003)
-
[Publications] K.Yonemitsu: "Dynamic Spin Correlations near Neutral-Ionic Phase Transitions"Physica B. 329-333. 1219-1220 (2003)
-
[Publications] K.Yonemitsu, N.Miyashita, M.Kuwabara: "Photoexcited States and Photoindeced Dynamics in Electronic Phases of MMX-chain Systems"Synthetic Metals. 135-136. 521-522 (2003)
-
[Publications] N.Miyashita, M.Kuwabara, K.Yonemitsu: "Photoinduced Dynamics of Ionicity near the Neutral-Ionic Phase Boundary in a One-Dimensional Extended Peierls-Hubbard Model"Synthetic Metals. 135-136. 645-646 (2003)
-
[Publications] 米満賢治: "低次元金属錯体の多様な電子物性の起源(大川尚士,伊藤翼編)「集積型金属錯体の科学」,II部12章"化学同人. 9 (2003)