2005 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境下の分子性導体における集団的な電荷ダイナミクスの理論
Project/Area Number |
15073224
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
米満 賢治 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助教授 (60270823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 靖文 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助手 (50390646)
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Keywords | 有機電荷移動錯体 / イオン性中性相転移 / 量子常誘電体 / 電荷移動揺らぎ / ハロゲン架橋金属錯体 / 光誘起絶縁体金属転移 / アルカリTCNQ / 光誘起逆スピン・バイエルス転移 |
Research Abstract |
交互積層型電荷移動錯体のDMTTF-QBr4では高圧下、絶対零度で中性イオン性相転移が起きる。転移温度の圧力依存性とバレット公式的な常誘電挙動から量子相転移とみなされている。イオン性相において分極が現れるが、中性相においてのみ量子常誘電性が観測されている。この起源を考察するためにイオン性相の分極の向きを変数+1と-1で中性相を変数0で表し、量子ブルーム-エメリー-グリフィス・モデルの平均場解を求めた。量子項のため電荷移動揺らぎが発生して、電荷移動量は0でも1でもない中間の値をとる。その結果として、量子臨界点近傍の中性相でバレット公式的な常誘電挙動が現れることがわかった。変数=+1/-1の量子イジング・モデルと違って、静電場下で誘電率が上昇することが期待される。 遷移金属(M)とハロゲン(X)が交互に並んだ1次元ハロゲン架橋金属錯体は、M=Niの場合、電子相関に由来するモット絶縁体である。光照射直後の光学伝導度に金属的なドルーデ成分が観測されている。1次元ハバード・モデルを厳密対角化してこの光誘起金属相を調べた。モット絶縁体を光照射するとホロンとダブロンとよばれる2種類のキャリヤが生成され、それらが系を動きまわることで金属的な性質が現われた。このホロン-ダブロンによるスペクトルは化学ドープされたキャリヤによるものと極めて類似していた。電子相関が弱いM=Pdの場合、CDW転移により並進対称性が破れてバンド絶縁体になるが、光を照射しても絶縁体のままである。Ni錯体とPd錯体の違いを説明するために電子間クーロン相互作用を最近接Mサイト間まで取り入れた1次元拡張ハバード・モデルを用いた。M=Pdの場合は光生成キャリヤ間引力が強く作用するために励起子が形成され、電流が流れにくい。M=Niの場合は光生成キャリヤ間引力が運動エネルギーに打ち勝てずに金属状態を維持できる。
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Research Products
(6 results)