2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属ガラスの過冷却状態からの結晶化のその場電子顕微鏡観察
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15074218
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
今野 豊彦 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90260447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千星 聡 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00364026)
堀 史説 大阪府立大学, 先端科学研究所, 助手 (20275291)
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Keywords | アモルファス金属 / 透過型電子顕微鏡 / 陽電子消滅 / 結晶化挙動 / 構造緩和 / 熱分析 / 自由体積 / 準安定相 |
Research Abstract |
本年度はZr-Cu-Al系ガラスの昇温中の緩和過程と結晶化過程をそれぞれ陽電子消滅法および透過電子顕微鏡で調べた。傾角鋳造法で作成されたZr_<50>Cu_<40>Al_<10>金属ガラスを673Kに等温保持し、陽電子寿命の変化を調べたところ密度が低下する時間域において陽電子寿命の減少が認められ、ガラス転移点以下で自由体積の減少していることが判明した。さらに同様の試料のドップラー拡がり実験結果はこの領域で原子配置の変化がないことを示唆し、自由体積の減少が原子の拡散等を伴わないものであることを明らかにした。一方、高温で焼鈍した試料に関しては陽電子寿命の減少に加えて原子配置の変化を示し、自由エネルギーの低下に伴い新しい結晶相が生成したことが強く示唆された。 透過電子顕微鏡による結晶化過程の観察の結果、結晶は1000nm程度の大きさのスフェルライト(球状の結晶相の塊の総称をスフェルライトと呼ぶ)の成長によるものであることが明らかになった。このスフェルライトは半径方向に成長する斜方晶系に属する結晶から構成されることをつきとめた。この結晶相に関する過去の報告はなく、現時点で単位胞はa=0.892nm, b=0.550nm, c=1.06nmであり、ブラベー格子は単純格子であることを確認しているが、空間群の特定までには至っていない。また、このスフェルライトは半径方向に多数の積層欠陥を含みレッジ機構による成長を強く示唆する。さらにエネルギー分散型分光の結果、このスフェルライトの成長はCu原子の分配を伴うものであることが明らかになった。すなわち、スフェルライトの成長とともに掃き出されたCu原子はスフェルライト間に濃化し、別の結晶相を形成する。この結晶相はa=1.28nmのfcc格子に属し、τ3相として知られている平衡相ではないかと現在、考えている。
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Research Products
(4 results)