2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15076203
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 正弘 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教授 (90195339)
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Keywords | 蛋白質フォールディング / 積分方程式論 / 排除容積 / 並進エントロピー / 構造エントロピー / 分子内水素結合 / 分子認識 / 生命現象 |
Research Abstract |
蛋白質フォールディング機構の解明に関する研究の一環として、3次元積分方程式論を用い、ペプチド分子や蛋白質分子の構造変化に及ぼす溶媒の並進熱運動の重要性に着目した新しい理論解析研究を実施し、以下の成果を得た。 (1)主鎖や側鎖の存在は、溶媒分子の入れない排除空間を生成する。それらが密に充填されると、溶媒分子が自由に動き回ることのできる空間の容積が増加し、溶媒の並進エントロピーが増加する。たとえば、ヘリックス構造形成の推進力として、脱水和を伴う分子内水素結合よりも、溶媒の並進エントロピー増加に伴う自由エネルギー減少の方がずっと大きいととがわかった。 (2)(1)で述べた効果は、溶媒がデンスであるほど、溶媒分子が小さいほど飛躍的に大きくなり、溶媒が水の場合に最大になる。充分大きなペプチド分子や蛋白質分子の場合、水の並進エントロピー利得は、構造エントロピー損失と競合できる大きさであることがわかった。 (3)水分子の並進熱運動の影響を受けて、側鎖がかっちりかみあって密にフォールドした場合、異符号に荷電した部位が互いに接近しあい、同符号に荷電した部位が互いに充分離れていることが必要である。「これらが満たされていない蛋白質はフォールドしないが、満たされるようなアミノ酸配列のみが自然淘汰されている」という概念を提出した。 (4)蛋白質フォールディング、酵素-基質間の分子認識、蛋白質の高次構造形成など、生命現象の発現に結びつく多くの過程には、一見多大のエントロピー損失を伴う。しかし、周囲の水溶液をも含めたシステム全体のエントロピーは必ずしも減少しないし、減少する場合でもそれに打ち勝つために必要なエエルギー利得はずっと少なくて済む。「生命になぜ水が必要か」に対する1つの答えである。
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Research Products
(7 results)